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(書評)金春屋ゴメス

著者:西條奈加

金春屋ゴメス (新潮文庫)金春屋ゴメス (新潮文庫)
(2008/09/30)
西條 奈加

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近未来の日本。関東と東北の境界に、「江戸」と言う独立国が出現した。大学生である辰二郎は、数百倍の難関を通り抜け、江戸への入国を許可される。彼を身請けしたのは、ゴメス大明神と呼ばれる長崎奉行・馬込播磨守。そして、致死率100%の流行病「鬼赤痢」の正体を突き止めること、そして、そのカギは辰二郎の記憶にあって……
なんか、すげぇ、舞台設定(笑)
だって、近未来に「江戸」ですぜ? しかも、日本国と江戸が並立する世界。さらに、江戸自体は、当時の技術水準などを再現して、医療であるとかも当時のままではある。でも、周囲の、近未来のしっかりと技術水準の情報などもしっかりと入っている状況。その世界観が、まず、この作品を形作っている。
とは言え、物語の大半は時代小説のそれに近い。日本で育った辰二郎の過去が、「鬼赤痢」の正体を探るカギという部分はあるものの、しかし、あくまでも江戸の町でその情報を求めて動く部分が強い。
何よりも、タイトルでもある「ゴメス」の人物像が凄まじい。身の丈6尺6寸、極悪非道で、暴力的。でも、人を動かし、決断力に優れたゴメスの存在感が際だっている。最初は、ただインパクトの強さがあったのだけど、そのゴメスの正体とか、どんどんその人間像が深まっていく。他にも、松吉の本名とかも、しっかりとツボを押さえていると思う。
もっとも、どんどんと深まる、というのは世界設定もそう。さっき、時代小説のような描き方がされている、と書いたのだけど、物語が収束するにつれて、やっぱりそちらへと回帰する。その辺の作り方が、やはり上手いな、と思う。また、そうすることによって、ある種、理想化されている「自然との共存」とか、そういうものがどういうものなのか、というのに対して懐疑的な視線を投げかけている作品である、とも言えるように思う。きれい事では済まないのだよな……と……。
ある意味、舞台設定が全てを、ということは言えるけど、でも、それが狙いと言えるのだろう。完成度の非常に高い作品ではないかと思う。

No.2053

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COMMENT 2

そら  2010, 04. 06 [Tue] 18:30

>ある種、理想化されている「自然との共存」とか、そういうものがどういうものなのか、というのに対して懐疑的な視線を投げかけている作品

確かにそうなのかもしれませんね~。
綺麗事では済まされないけど,それ相応の覚悟はホントにあるんですかいと問いかけているみたい。

それにしても。
文庫表紙のゴメス。
す,すごすぎるo(^▽^)o

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たこやき  2010, 04. 06 [Tue] 19:45

そらさんへ

自然との共存、などの言葉については、私自身が結構、懐疑的に考えている、っていうのも大きいんですけどね。
そらさんの感想にあった、一つの薬も長年の技術の結晶、というのも根は同じなのではないか、と感じます。抗生物質とか、そういうのも、自然とは異なった状況を人為的に作り出しているわけですし……

>文庫表紙のゴメス。
>す,すごすぎるo(^▽^)o
インパクト抜群ですよね(笑) 書店で見たとき、何語かと思いましたもん(笑)

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