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(書評)明日の空

著者:貫井徳郎

明日の空明日の空
(2010/05/26)
貫井 徳郎

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生まれてから、ずっとアメリカで育った栄美。しかし、両親の仕事の関係で、高校3年生から、初めての日本での生活が始まる。「集団を重んじる社会だ」という父の言葉にプレッシャーを感じていた栄美だったが、すんなりとクラスに溶け込み、クラスでも人気者の少年との距離も縮まって……
なんか、貫井さんの作品とは思えないほどに明るい作品。いや、最終的には、明るいだけではない、のだけど。
物語は3章構成。
第1章では、冒頭に書いた少女・栄美が高校に入って……という形で描かれる。自己主張をしすぎると嫌われる、とか、そういうものをいわれながらもうまく溶け込んだ学園。クラスでも人気の飛鳥部という少年とも近づく。でも、なぜかすれ違いも生じるようになっていく……
第2章では、場面転換で、海外に行きたい、という青年がひょんなことから、アンディという黒人の青年と出会い。打ち解ける。そして、第3章で……
ここのところ、かなり分量的にも多い作品が続いていた貫井さんの作品だけど、本作は170頁超というかなりコンパクトな分量。そして、物語も、事件などが出ず、殆どは栄美の、青年の青春物語として描かれる。いくつかの部分で、「?」と感じるところはあるが、しかし、何てことのない日々。そして、最後に明かされる真実。
帯には「わたしは本当に、何も見えていなかった」とあるけど、ある意味、明かされる真実の部分というのは、栄美だから見えていなかった、のではなくて、日本人こそ見えていない部分ではないか? とも思う。もっとも、栄美だからこそ、それを打ち破ったところもあるのだろうが。そして、そのことを告げられたことは、栄美にとって良いことなのか、悪いことなのか……ほろ苦い後味が残ったのも確か。
多少、心情描写とか、そういうところに物足りなさを感じるところがあるし、真相の部分もちょっと強引に感じるところもあるが、でも、この分量で青春小説として見せながら、しかし、日本という社会の一面を記しているのはさすがだな、と感じる。

No.2137

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COMMENT 6

苗坊  2010, 06. 27 [Sun] 23:57

こんばんわ。TBとカキコありがとうございました。
私は貫井さんの作品をそれほど多く読んでいないのですが、作品が暗めで、分厚い本という印象があり^^;
でも、今回は薄くて読みやすくて爽やかな印象でした。
強引な部分もありましたけど、前向きなラストで私は好きでした。

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たこやき  2010, 07. 02 [Fri] 07:59

苗坊さんへ

>私は貫井さんの作品をそれほど多く読んでいないのですが、作品が暗めで、分厚い本という印象があり^^;
全部読んでも、同じような感じです(ぉぃ)

でも、明るい作品がない、というわけではないんですけどね。『さよならの代わりに』とかも、作風としては似ている感じですし。
ただ、この作品にしても、無意識のうちの差別とか、人の悪意とかは描かれていて、その上で、でも前向きになれる形にしていると思います。その辺り、テーマは同じなんだな、と思います。

ちょっと強引なところはありますけど、貫井さんの作品を読んだことがない人にも勧めやすいかな? と思います。
これを読んだあとで、重い作品を読むとどうなのか、とは思いますが(笑)

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じゅん  2011, 06. 14 [Tue] 17:00

どうもー

期待どおりのオモシロさでした。

何よりやっぱり、このテーマを
この軽さとこの分量でしっかりやっちゃう貫井さんが
すごいな~と思いました。

あんなに、ゴリゴリとしたものも書くのになー
って感じです(笑)

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たこやき  2011, 06. 16 [Thu] 00:02

じゅんさんへ

本当に、普段の分量と比べると半分以下しかないのに、物語の軸となる部分は全くぶれていないんですよね。
普段の、重厚極まりない作品と比べると、軽やかな感じですけど、逆に、貫井さんの作品の入門編としてよいのかも知れない、という風にも思います。

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そら  2011, 09. 05 [Mon] 17:11

>この分量で青春小説として見せながら、しかし、日本という社会の一面を記しているのはさすがだな、と感じる。

感じる感じる(*^_^*)
「鮮やかなトリック」というのは,
この作品のように,
トリックが存在するからこそテーマが明確になる
…というものなのかもしれないなと思いました。

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たこやき  2011, 09. 09 [Fri] 19:49

そらさんへ

こんばんは~。

> 「鮮やかなトリック」というのは,
> この作品のように,
> トリックが存在するからこそテーマが明確になる
> …というものなのかもしれないなと思いました。

確かに、この作品の場合、トリックによる衝撃もありますけど、テーマ性をはっきりさせる、という効果もありますよね。言われてみると、そこは上手いと改めて思いました。
でも、分量やカラーが普段と違っても、テーマが一貫している著者らしい作品だと思います。

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