FC2ブログ

(書評)龍神の雨

著者:道尾秀介

龍神の雨龍神の雨
(2009/05)
道尾 秀介

商品詳細を見る


妹と継父と三人暮らしの蓮。働かず、自分に暴力を振るい、妹をよこしまな目で見る。雨の日、蓮は、そんな継父の殺害を試みる。継母と、その継母を嫌う兄と三人で暮らす圭介。自らの言葉により、実の母を死に追いやったのでは、と考える彼は、ひょんなことから、兄と共に、蓮たちの秘密を知ってしまう。そして……
第12回大藪春彦賞受賞作。
何というか……本当、タイトルではないけど、「雨」という言葉が全てを象徴しているような作品。
主人公は、冒頭にも書いたように二組の兄弟。片方は、ロクでもない継父を持ち、苦労している蓮と楓。もう一つは、しっかり者の継母がいながらも、しかし、素直に慣れない辰也と圭介。雨という状況によって、事件は起こり、雨によって結びつけられ、そして、雨によって道を踏み外していく。そんな印象が強い。
ひょんなことから結びついた二つの兄弟と事件。その二つの兄弟同士の間に、そして、蓮と楓、辰也と圭介、それぞれの間に、やはり雨が降っているかのような印象。雨によって遮られた視界により、全ての間に猜疑心が芽生え、そして、雨の中でそれぞれの思惑が絡みつき、さらなる猜疑心を作り上げていく。カラッと晴れていれば、すぐに見えるようなものでありながら、そうならないもどかしさ。
これまでの道尾さんの作品と同じように、中盤くらいまでは、事件を起こした蓮と楓、目撃した辰也と圭介という二つが素直に結びつけられているかのように見せ、しかし、その中の仕掛けによってひっくり返されていく、というサプライズは健在。そのサプライズなどについても、やっぱり、それぞれの兄弟の、じっとりと雨が降りしきるような心情描写を多く入れることにより、目隠しされているのではないか、という風に感じる。
真相がわかった後の後読感もまた複雑。真相はわかっても、しかし、決して許されることではなく、また、希望があるように見えて、絶望の方が大きいのではないか? そんな感じを思わせる結末。これまで、「雨」の印象により培われた物語と書いてきたが、その結末は、雨がやみ、晴れ間が出来た、というような感覚とはほど遠いように感じた。
全てがひっくり返るサプライズと、じっとりとしたそれぞれの心情。両者がうまくかみ合った快作だと思う。

No.2148

にほんブログ村 本ブログへ




http://xxxsoraxxx.blog11.fc2.com/blog-entry-875.html
http://red.ap.teacup.com/jyublog/4308.html
スポンサーサイト



COMMENT 2

そら  2010, 07. 15 [Thu] 11:27

今ごろTBです(^^;)

>その結末は、雨がやみ、晴れ間が出来た、というような感覚とはほど遠い

本当に。
読み終わった後の
胸をふさがれるような感覚が,
何とも辛い作品でした。
…それでもまた,
道尾作品を読んじゃうんだよね~(^^;)

Edit | Reply | 

たこやき  2010, 07. 18 [Sun] 20:18

そらさんへ

こんばんは~。
道尾さんの作品、読み終わったあと、ずっしりと来る作品は多いのですが、その中でも、という風に感じました。

ただ、それでも、ひっくり返しとか、そういうのを含めて魅力たっぷりなんですよね。
それが、道尾さんの魔力なんでしょうね。

Edit | Reply | 

TRACKBACK 2

この記事へのトラックバック
  •  「龍神の雨」 道尾秀介
  • 雨の匂いに満ちた作品。 ★★★☆☆ 人は、やむにやまれぬ犯罪に対し、どこまで償いを負わねばならないのだろう。そして今、未曾有の台風...
  • 2010.07.15 (Thu) 11:20 | 日だまりで読書
この記事へのトラックバック
  •  『龍神の雨』 道尾秀介
  • 「道尾秀介」の長篇ミステリ作品『龍神の雨』を読みました。 [龍神の雨] 『鬼の跫音』に続き「道尾秀介」作品です。 -----story------------- 自分を責めながら弟は生きてきた。 妹の告白を聞き、兄は犯罪計画を立てた。 「道尾秀介」は、決してあなたを裏切らない!! 第12回(2010年) 大藪春彦賞受賞 「添木田蓮」と「楓」は事故で母を失い、継父と三人で暮らしている。 ...
  • 2017.02.21 (Tue) 21:35 | じゅうのblog