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(書評)街の灯

著者:北村薫

街の灯 (文春文庫)街の灯 (文春文庫)
(2006/05)
北村 薫

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昭和7年。上流階級の子女が集う学校に通う英子。その英子の運転士として、新たに雇われたのは、女性運転士の別宮みつ子。「ベッキーさん」と彼女のことを呼ぶことにした英子の前に、事件が起こって……
ということで、『虚栄の市』、『銀座八丁』、『街の灯』の3編を収録した連作短編集。
まず、解説でも触れられているのだが、最初に感じたのは「円紫師匠」シリーズに似ているということ。「わたし」で始まる一人称、主人公の日常などの分量が多いという点。優しい雰囲気などが、それを思わせるのだろう。
ただ、個人的には、やたらな人格者である円紫師匠よりも、人間的な弱さとか、そういうものが感じられ、こちらの方が読みやすかったな、と思う。
華族制のある戦前の日本。その中での主人公の日々。決して世間知らず、というわけではないけど、けれども、庶民とは全く異なった世界での日常。その様子が作品の雰囲気を作り上げているように思う。それぞれ、文学作品などを題材に扱っている、というのも、著者らしさ、そして柔らかい雰囲気を作っているように思う。ただ、そうは言いつつも、世界恐慌の影響であるとかが、背後に見え、それがシリーズのその後への不安をかき立てる、というのも一つの特徴かも知れない。
そんな中で、雰囲気はともかく、事件は結構、生臭いものもあったり。殺人事件なども描かれるので。それでも、柔らかい雰囲気なのが、やはり、この作品らしいということか……
作中で好きなのは、やはり表題作だろうか。チャップリンの映画『街の灯』を題材とした物語。それに重なるような形で起きた事件と、決して、明るいだけではない感情。そういうものが、世界観と重なって感じられ、特に印象に残った。
『銀座八丁』辺りの謎解きは、「解けるか、こんなもん!」状態だったりはするのだけど、作品の雰囲気がよく、かつ、時代性故の、その後へのことが気になる。そんな作品になっているように感じた。

No.2184

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COMMENT 2

根岸鴨  2010, 07. 10 [Sat] 17:41

シリーズ三作目でとうとう直木賞受賞しましたね~! 段々ミステリっぽさがなくなっていくかと思ったら、玻璃の家は館ものだったので驚きました。でも円紫シリーズの魅力的なホワイダニットが懐かしい…

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たこやき  2010, 07. 14 [Wed] 23:44

根岸鴨さんへ

北村さん、本当、候補になっては落選、の繰り返しでしたからね~。
2作目は、館モノですか。何か、探偵役がベッキーさんに、っていうのでも、大分、雰囲気が変わるような印象なので、楽しみです。

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  •  街の灯/北村 薫
  • 「玻璃の天」が面白かったので、英子とベッキーさんが登場する第1作「街の灯」を読んでみました。 この作品では、「玻璃の天」と比べると...
  • 2010.07.09 (Fri) 22:00 | 日々の記録