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(書評)黄泉路の犬 南方署強行犯係

著者:近藤史恵

黄泉路の犬―南方署強行犯係 (徳間文庫)黄泉路の犬―南方署強行犯係 (徳間文庫)
(2008/11/07)
近藤 史恵

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刑事課へ配属されて3ヶ月。やや暇な状態になっていた南方署に入った一報は、東中島に住む姉妹を襲った強盗事件。犯人は、現金2万円と、ペットのチワワを奪って逃走したという。それから2ヶ月、被害者の元に、そのチワワではないか? という情報が入り……
狼の寓話』に続く、シリーズ第2作。今回も、「警察小説」という煽り文句は付いているものの、いつもの近藤作品という趣き。警察小説で良く出てくるような、各部署での縄張り争いとか、各刑事の手柄争いの駆け引きとか、そういうのはあまりない(むしろ、かなりそれぞれ協力的)
無論、だからつまらない、という意味ではない。
劣悪な環境で、多くの動物を飼っていた女性の不審な死。状況から、自殺ではないか、と判断されるものの、しかし、色々と残る違和感。元々は、盗まれたチワワを探しての事件だったはずなのに、それはペットを巡っての物語へと繋がっていく。「動物愛護法」という法律はあるものの、しかし、法律上は「モノ」でしかない動物。その一方で、まさしく、動物を心の支えとして生きている人々。そして、アニマル・ホーダーという心の病にまで発展してしまう存在……
前作も、色々と苦い部分があった話なのだけど、今回は、自分自身がペットを飼っていた(実家では、今も猫を飼っている)身として、より身につまされた。傷ついた動物を助けたい、と感じる気持ちは美しい。でも、それが心の支えになってしまうことの悲劇。冒頭、主人公である圭司が、傷ついた子猫を拾って、というシーンから始まるのだが、そういうところから、全く隙のない作りになっているのが憎い。そして、それ以外にも、動物を保護するシェルターだとか、ボランティアなどもカバーしている。
と言いながら、本作もキャラクターの掘り下げも忘れない。圭司の先輩である女性刑事・黒岩の葛藤などがあり、一方で、相変わらずの圭司と兄・宗司のやりとりがあったり……と、ただシリアスなだけでなく、キャラクター小説としての魅力もたっぷりだと思う。
第2作の本作が05年に出て、その後、新作が出ていない。合田力シリーズとかもそうなのだが、キャラクターが魅力的なだけに、続刊も出て欲しいな、と思わずにはいられない。

No.2207

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