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(書評)オリーブ

著者:吉永南央

オリーブオリーブ
(2010/02)
吉永 南央

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5編を収録した短編集。
それぞれ、そのパートナーについて何も知らなかった、ということを題材にした作品。
表題作は、5年間、連れ添った妻が失踪。しかも、金などを全て持って行かれ、また、婚姻届なども出されていなかった……というもの。その中で、妻は何者だったのか? 何をしていたのか? に……。
それぞれのエピソード。いきなり失ったり、違和感を感じたりするところから始まり、相手に対し、徹底的な不信感。ところが、それで終わらずに、きっちりとそこに折り合いをつけ、一つの安心感へ……という流れが上手い。それぞれ、決して明るい話ではないのに、それでも希望というか、安心感を感じさせる。毒は効いているのに、ただ毒々しいだけでないまとめ方のバランスが絶妙じゃないかと思う。
その中でも、やっぱり、最後に収録された、『欠けた月の夜に』が良い。
何不自由のない日々から一転、夫の突然の死。過労死ではないか? と、会社に対して不信感を抱く妻の元に届く手紙。そして、それを調べる中で、夫に対しても浮かんでいく不信感。しかし、一番、何も見えていないのは……
それまでの4編も、最後にはほんのりと安心感を抱かせるものがあるのだけど、最後の話は、その中でも特に、そういうものを強く感じさせる。周囲が見えているようで見えていない。他人のためのように見せて、実は、自分の思いだけで独走している……誰にでもありがちなことだけど、そんなところに気づき、新たな一歩への糧にするラストシーン。
分量的にも、それほどボリュームがあるわけではないが、しかし、1編1編の、そして、作品集としての完成度が高い1冊じゃないかと思う。

No.2212

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