著者:乃南アサ
小森谷芭子と、江口綾香。それぞれ、刑務所で知り合った二人。下町で新しい暮らしを始めた二人だが、その暗い過去は常につきまとう。
そんな二人を中心に描いた4編を描いた連作短編集。
読んでいて、まず、頭の中に浮かんだ書籍がある。それは、『続 獄窓記』(山本譲司著) 山本氏が、刑務所を出てから、再出発するまでを綴った書なのであるが、その中で、出所はしたものの受刑者となったことで失ったもの、そのレッテルなどによる萎縮というような序盤、赤裸々に綴られる。
本書の主人公・芭子の姿もそれに重なっているように感じる。豊かな家に生まれながら、ホストにのめり込み、その金を作るために昏睡強盗を働いて受刑者となった芭子。出所してからも、常に、そのことが自分から離れることがない。
作中で、芭子自身が自分で言っているように、前科を持っている身としてはむしろ恵まれた状況。住む家はあり、同じ経験をし、愚痴を言い合える友がいて、一応の生活は出来る状態にある。それでも、失ったものが多く……
例えば、家の中であっても、刑務所に入っていたことについて神経質になってしまう。親切心で近づく警察官にも、まず思うのは警戒心のみ……。その中での日々。
物語としては、日常の延長線にあることばかり。けれども、その前科がある、という立場故に、どうしても抱いてしまう劣等感などが非常に丁寧に描かれている。だからこそ、その心情がしみじみと理解出来、物語に深みを与えているように思う。各編のまとめは、少し、光明を感じるのだが、それも、単純に救いが与えられるのではなく、状況は決して前進しているとは言えないにせよ、でも、芭子が一歩成長する、そういう形にしたことにより、地に足がついた展開となっているのが大きいと思う。
芭子にしろ、綾香にしろ、その過去をずっと隠し通せるとは思えない。そのとき、どうするのか? そういうことを思いつつも、しかし、作中で描かれるのと同じように一歩ずつ成長し、乗り越えていくんじゃなかろうか? そんな感じがした。
No.2237

![]() | いつか陽のあたる場所で (新潮文庫) (2010/01/28) 乃南 アサ 商品詳細を見る |
小森谷芭子と、江口綾香。それぞれ、刑務所で知り合った二人。下町で新しい暮らしを始めた二人だが、その暗い過去は常につきまとう。
そんな二人を中心に描いた4編を描いた連作短編集。
読んでいて、まず、頭の中に浮かんだ書籍がある。それは、『続 獄窓記』(山本譲司著) 山本氏が、刑務所を出てから、再出発するまでを綴った書なのであるが、その中で、出所はしたものの受刑者となったことで失ったもの、そのレッテルなどによる萎縮というような序盤、赤裸々に綴られる。
本書の主人公・芭子の姿もそれに重なっているように感じる。豊かな家に生まれながら、ホストにのめり込み、その金を作るために昏睡強盗を働いて受刑者となった芭子。出所してからも、常に、そのことが自分から離れることがない。
作中で、芭子自身が自分で言っているように、前科を持っている身としてはむしろ恵まれた状況。住む家はあり、同じ経験をし、愚痴を言い合える友がいて、一応の生活は出来る状態にある。それでも、失ったものが多く……
例えば、家の中であっても、刑務所に入っていたことについて神経質になってしまう。親切心で近づく警察官にも、まず思うのは警戒心のみ……。その中での日々。
物語としては、日常の延長線にあることばかり。けれども、その前科がある、という立場故に、どうしても抱いてしまう劣等感などが非常に丁寧に描かれている。だからこそ、その心情がしみじみと理解出来、物語に深みを与えているように思う。各編のまとめは、少し、光明を感じるのだが、それも、単純に救いが与えられるのではなく、状況は決して前進しているとは言えないにせよ、でも、芭子が一歩成長する、そういう形にしたことにより、地に足がついた展開となっているのが大きいと思う。
芭子にしろ、綾香にしろ、その過去をずっと隠し通せるとは思えない。そのとき、どうするのか? そういうことを思いつつも、しかし、作中で描かれるのと同じように一歩ずつ成長し、乗り越えていくんじゃなかろうか? そんな感じがした。
No.2237

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