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(書評)白砂

著者:鏑木蓮

白砂白砂
(2010/07/21)
鏑木 蓮

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アパートをしながら受験を目指していた女性・高村小夜が殺害された。真面目だった、という彼女だが、アパートに通う中年男性、振り込まれいていた大金、そして、質素倹約を絵に描いたような彼女には不釣り合いなペンダントが残されていた。捜査に当たる刑事の目黒と山名は、そのペンダントが遺骨を用いたものであることを突き止める……
鏑木さん、デビュー作から非常にリーダビリティの高い作品を書くという印象があったが、ますますそのリーダビリティの高さに磨きが掛かってきたように思う。
殺害された女性、唯一の遺留品であるペンダント。そのペンダントの正体と、だとすれば今度はなければならないはずの遺骨が消えている。被害者であるが、しかし、実家から拒否された存在となっている小夜であるとか、別の人物の視点、さらには、散骨であるとか、メモリアル商品の業界であるとか、そういう小ネタを混ぜ込んでどんどん読み込ませる技術はすばらしい。
話の展開としても、犯人が誰で、どういう理由で殺害したのか……というのは中盤で判明し、3分の2くらいで犯人逮捕、まで行くにもかかわらず、今度は犯人が思わぬ行動に出て……というひねり方をしてくるとも思わなかった。そういう意味で油断ならない、とは感じる。
ただ、事件の真相に関しては、うーん……。言いたいことはわかるし、また、タイトルの関連や、狙いなんかも合理的ではある。ただ、犯人の思っていること、とか、そういうのが作中で何度か綴られて、その上で実はこうでした、的な結末になんか、すっきりしないものを感じてしまった。なんか、都合の良いところだけを繋ぎ合わせてしまったような、そんな感じの印象を。もし、犯人視点の部分がなければ、もっとすっきりした気がするのだが。
話のつじつまが合っていない、とか、そういうわけでは全くなく、上手くまとまってもいると思う。でも、何かすっきりしない。変な後読感が残った。

No.2244

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