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(書評)ジョーカー・ゲーム

著者:柳広司

ジョーカー・ゲームジョーカー・ゲーム
(2008/08/29)
柳 広司

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昭和12年秋、諜報員として海外で活動していた結城中将の発案により、「D機関」と呼ばれるスパイ養成機関が設立される。官僚制のはびこる陸軍からも批判を浴びるこの組織、出身者を主人公とした連作短編集。
面白かった。何よりもそれだろうか。
実のところ、私が著者の名前を知ったのは本作が、各種ミステリランキングなどに名を連ねたことがきっかけ。とりあえず、その前に出版された作品を、という形でようやく手に取れた分けであるが。
第2次大戦前夜を舞台にして、という辺りの時代設定などは、過去の著者の作品でもある。ただ、本書はこれまでのような、歴史上の人物や、文学作品を題材に取るのではなく、あくまでもその時代だけを切り取っての作品となっている。
「スパイは見えない存在」「死ぬのも、殺すのも最悪の選択」
といった言葉が表すとおり、いかに相手にわからないように情報を手に入れるのか? それを伝えるのか? 徹底的にたたき込まれるリアリズム。そして、その出身者すらをも手駒として使うことも辞さない結城たち。不敬罪などがある中、目的のためには、天皇制すらを疑う。
スパイモノ、というジャンルは沢山あるわけだが、敵を打ちのめして……とか、そういうことではなく、あくまでも静かに、しかし、だからこその頭脳戦が非常に面白い。そして、その先に、それぞれひっくり返しを用意するなど、最後まで驚かせる意図が見え、余計に面白い。
収録作で特に印象的だったのは、潜伏先で捕らえられたところから始まる『ロビンソン』。捕らえられ、自殺すら許されない状況の中で、どのように事態を収束させるのか? そして、最後に明らかにされる主人公が潜伏したことの意図……。全く予想しない形での決着に脱帽した。
最初にも書いたけど、面白かった。続編(?)の『ダブルジョーカー』も評判が良いので、そちらも楽しみ。

No.2295

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  •  『ジョーカー・ゲーム』柳広司
  • スパイモノの短編集。 スパイといっても、「007」とか「メタルギア」とか、そういうのじゃないです。 もっと地に足の着いた、リアルで地味なスパイのお話。 第二次大戦に向かう ...
  • 2011.07.12 (Tue) 13:21 | 時間の無駄と言わないで
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  •  「ジョーカー・ゲーム」 柳 広司
  • 旧日本軍のスパイ学校・D機関を舞台にしたスパイミステリ小説「ジョーカー・ゲーム」読了。 いやー、面白かった!痛快なミステリ仕立てのこのスパイ小説は、ドキドキハラハラしな
  • 2012.08.30 (Thu) 01:20 | 日々の書付
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