(書評)最後の証人

著者:柚月裕子

最後の証人最後の証人
(2010/05/10)
柚月 裕子

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ホテルで起こった殺人事件。被告と被害者は不倫関係にあり、同日、同じホテルにチェックインしたことも、また、凶器などの指紋も残っている。しかし、被告は犯行を否認。ヤメ検弁護士の佐方は、その弁護を担当し……
著者のデビュー作、『臨床真理』は、正直なところ、色々とツッコミどころがあって微妙な印象だったのだけど、今回は素直に楽しむことが出来た。
物語はその公判の様と、そこに挿入される形で、事故で息子を喪いながら相手が公安委員長ということでもみ消された夫婦の葛藤、という構成で展開していく。
犯行時、部屋には被告と被害者しかいないことは明らかで、犯人は被告しかいないだろう、という状況。被告と被害者の関係も、周囲の証言などから、その状況を示唆する補強材料に。その中、沈黙を通す佐方。
一方で、警察すら握りつぶしてしまう息子の事故に憤り復讐を誓う夫婦。そして、その結果として考えたある計画。紹介文その他を見ていると、法廷ミステリのように見えるのだけど、むしろ、物語の主となるのは夫婦の葛藤の方ではないのか、という気さえしてくる。丁度、検察による証拠改竄事件とかが明らかになった、とか、そういうのも重なって、凄くタイムリーな状況で読んだ。
ミステリとしての仕掛けに関して言うと、これは気づく人は気づくんじゃないかと思う。結構、露骨に伏線を張っている部分があるし。でも、それがわかったとしても、作品の良さが損なわれるとは感じなかったのだが。
敢えて気になる箇所を言うなら、もうちょっと前半の法廷の描写に力があっても良いと思うし(あまりにも、何もなさ過ぎるように感じる)、また、佐方がひっくり返す推理などもこれだけ見ると、ただ、凄まじい推理力過ぎて……と感じてしまうところがある。欠点とすら言えない些細なところだけど。
とは言え、デビュー作と比べると完成度などは大幅に上がっており、最後まで面白く読むことが出来た。

No.2307

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  •  証人によって・・・
  • 小説「最後の証人」を読みました。 著者は 柚月 裕子 法廷ミステリーといえばいいのか 日本の小説で法廷ものは初かも がっつり 裁判劇で とはいえ スラスラ読め 文量としても長くなく やはり 題名どおり、最後の証人が肝ですね ここからグッと面白くなり なかなか ...
  • 2011.11.19 (Sat) 09:12 | 笑う学生の生活