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(書評)三国志 六の巻 陣車の星

著者:北方謙三

三国志 (6の巻) (ハルキ文庫―時代小説文庫)三国志 (6の巻) (ハルキ文庫―時代小説文庫)
(2001/11)
北方 謙三

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河北を制し、南下に向けて着々と足場を固める曹操。曹操の南下に対抗するため、父の敵である黄祖を討つ孫権。そんな中、劉表の元、新野に滞在する劉備は、徐庶に紹介された男、諸葛亮の元を訪れる……
ということで、ついに諸葛亮孔明が登場。この登場シーン自身も、いわゆる「三顧の礼」に近い形を取りつつも、しかし、独特の描き方をしているな、という印象。
そして、物語としては、緩急の差が凄いな、という印象。
最初の章では、涼州の馬超や北伐を敢行する曹操、黄祖を破る孫権……と、前巻に続いて、比較的、落ち着いた展開。その中で、劉備が諸葛亮の元を訪れる、というのにも一章を費やす。三度にわたって諸葛亮を訪れ、彼に志を語る劉備。そして、それを断りつつも、しかし、劉備の言葉が響いていく諸葛亮。この辺りは、本当にゆっくりと描かれている、という印象。
しかし、その諸葛亮が天下三分の計を語り、劉表が死んだ、というところから急展開。
曹操を破るため、曹操の南下を防ぐため、曹操を誘導する戦い。劉備を慕い、共に移動する人々を盾にする形での南下作戦。逃げる劉備と、それを追う曹操軍の先鋒・張遼。長坂橋の戦いの臨場感が見事。そして、その臨場感を残したまま、今度は、単独で曹操と立ち向かうつもりの孫権陣営から派遣された魯粛とのやりとり、と、めまぐるしく展開していき、前半とは全く異なった怒濤の展開にどんどん引き込まれた。
その反面として考えれば、前巻で感じた曹操の「何かに急かされる」ような姿というのが、ますます進んでいった印象。諸葛亮の策もそうだし、その上で、参謀として考えていた郭嘉の死であり、息子の死であり、劉表の死による後継争いの当てが外れたことであり……と、全てが「急く」ように要請しているかのように。それが行き着く先は、読者としてわかっているわけだけど。
ということで、いよいよ、次巻は三国志の中の山場とも言うべき、赤壁の戦い。どういう風に描くのか楽しみ。

No.2309

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