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(書評)主よ、永遠の休息を

著者:誉田哲也

主よ、永遠の休息を主よ、永遠の休息を
(2010/03/20)
誉田 哲也

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通信社に勤務する鶴田は、偶然にも、コンビニ強盗が起きた場に居合わせ、逮捕協力をすると同時にスクープをものにする。そんなとき、その逮捕協力者から、暴力団事務所が荒らされた事件についての情報を得て……
やるせない内容。しかし、一方で、主人公・鶴田の口調はひたすら軽い。これをアンバランスととるか、重くなりすぎないための工夫と取るか、というのも評価に大きく影響しそう。私自身は、そんなに悪い印象は覚えなかった。
物語のベースとなっているのは、14年前の女児誘拐殺人事件。描写などからすると、宮崎勤事件をベースにしているのではないか? という部分が多々ある。ただし、作中の事件では犯人は精神鑑定の結果、無罪になっている、と、現実の事件とは異なる部分も多い。
以前、同著者の『ハング』を読んだときにも、感想として「やるせない」と書いたのだけど、本作もやっぱり「やるせない」。
形としては、ミステリ作品。暴力団事務所が荒らされた、という情報から始まって、映像の流出事件へ。その調査の中で14年前の事件が絡み、その真相へ、という流れ。話の転がし方だとか、そういうものは上手いのだが、伏線が丁寧に張られているため、真相そのものを予想することは決して難しくない。ある程度のところで読めると思う。でも、それって、全くマイナス評価にすべき部分ではないのだろう。なぜなら、先にも書いた「やるせなさ」を高めるための道具として、ミステリという形を取っているように思うから。
被害者の叔父のために動いた鶴田。ある種の狂気はあっても、事件の傷を最小限にしたいと映像流出を止めようとする叔父。どちらも、100%、他人のため、があるわけじゃないが、他者のために行ったことも事実。でも、その行動が犯人によって台無しにされ、全ての行動がマイナスへと転化してしまう。最初から、全てが掛け違っていた、といってしまえばそうなのかも知れないが……、でも、それができないからこそ、だろうし……(ネタバレをしないようにした結果、何だかとっても曖昧な文章になってしまった) とにかく、やるせない。
物語全体を通すと、終盤の展開がやや強引な感じがするのがちょっと気になったが、一気に読ませる力はある作品だと思う。

No.2348

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