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2010/12/15 (Wed) 20:12
(書評)光媒の花

著者:道尾秀介

光媒の花光媒の花
(2010/03/26)
道尾 秀介

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認知症の母を抱えながら印章店を営む男。共働きの両親を街ながら「虫取り」に出かける兄妹。20年前の事件を引きずるホームレス……。同じ地域に住む人々の、それぞれの抱えた事情を描き出す連作短編集。
全6編を収録した短編集ではあるが、それぞれ、1編目に登場した人物が2編目の主人公に。2編目で登場した人物が……と、バトンタッチするような形で物語が紡がれていく。
ここ何作か、私が読んだ著者の作品というのは、どれも靄が掛かったようなそんな雰囲気を漂わせる。本作にしても同様。
1編目。認知症の母の介護をしながら、印章店を営む男。彼には、30年前、父の持っていた別荘地での初恋と、その後の苦い思い出がつきまとっていた。そんなとき、母が発した言葉で、再び、その地獄へと突き落とされる。
そんな、救いの話から始まって、序盤の物語は陰鬱極まりない物語ばかり。しかし、物語が折り返しを過ぎると、物語の雰囲気も反転し始める。そして、全てのエピソードが繋がったとき、かすかに救いの光が見えてくる。
こんな言い方は、何だけど……この6編って、丁度、日暮れから夜明けまで、という時間の移り変わりというものを、頭の中で意識した。陽が落ちて、だんだんと人通りも少なくなり、寂しい状況へと移りゆく時間帯。そして、そんな時間帯を過ぎ、今度は夜明けに向かい、少しずつ明るく、動きを取り戻していく時間帯。「明けない夜はない」 そんなものを表しているように感じるのだ。
……と言いつつ、経済企画庁長官とかをやった某作家は「夜明け前が一番暗い」と言っていたな、とか、真逆のことも頭をよぎったりもしたけど(笑)
もの悲しくはあるのだけど、でも、不思議と後読感は良い。
各編がきっちりと繋がっている、というわけではないが、しかし、それが繋がって、上手くまとまっている気もする。そういうのも、社会というものなのかな、とか思う。

No.2375

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