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(書評)三国志 十二の巻 霹靂の星

著者:北方謙三

三国志〈12の巻〉霹靂の星 (ハルキ文庫―時代小説文庫)三国志〈12の巻〉霹靂の星 (ハルキ文庫―時代小説文庫)
(2002/05)
北方 謙三

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劉備の意志を継いだ諸葛亮。疲弊した国を立て直すと、新たな力を得るため、豪族たちが収める南中の平定を目指す。その一方、魏の曹丕は、父の時代より盤石な国を築きながらも父にあって、自分にない戦の才に取り憑かれていく……
物語当初からの英雄達が、既に死んでしまい、新たな世代の戦いへ……と移行した中での物語になっているわけだけど、まず、その新たな世代の代表格・曹丕の死が印象的。
父・曹操から国を受け継いだ曹丕。無能な二代目、とか、そういったことはまるでなく、国の制度を始め、父の時代よりも遙かに盤石な体制を作り上げるという有能な帝。しかし、ただ一つの欠点である戦の才能。
戦は苦手だから、誰かに任せてしまう。そう割り切れるのであれば良い。しかし、それが出来ず、ただ一つの欠点にこだわり、そこに惑わされていく曹丕。その代償は、重篤な病。
「国家の姿などどうでもよく、ただ戦に勝ちたかった」
父の華々しい戦を見て育った、曹丕のコンプレックスが、この一言に全て含まれているように感じる。
そして、そんな曹丕の死の後に始まる諸葛亮の北伐。ここからは、まさしく諸葛亮の苦悩の物語へ……。
「泣いて馬謖を斬る」という故事の元となった、街亭の戦い。劣勢という形成を逆転するべく、諸葛亮が仕掛けた完璧な戦術。老いてなお、その技量に衰えのない趙雲、困難を打ち払って進む魏延。涼州らの不満分子。それらが連携し、魏の皇帝・曹叡の首さえをも危うくする壮大な作戦。しかし、その唯一の、しかし、致命的な瑕疵は、諸葛亮が息子のよう愛し、期待した馬謖の独断専行……。
三国志において、諸葛亮って、劉備に益州を取らせた、とか、その辺りまでで、その後は失敗も多い……という感じで、天才と言えるのか、と思っていた部分もあったのだけど、このシリーズを読んでいると、天下を取るのに才能は必要だが、それだけではない、というのを強く思う。完璧であったはずの作戦も、それをこなすのは人であり、人が動く限り、瑕疵も生まれてしまう。完璧であるが故に、崩れたときの脆さも同居し、多くの血を流す。
「疲れた」と諸葛亮がもらすシーンがあるけど、本当に、そうなるだろうと思う。その苦悩というのは、並ではないはず。苦悩し、そこから学び、次へと立ち上がる、それこそが天才の証、というのは説得力が抜群にあった。
いよいよ物語最終巻。シリーズ後半の主役とも言うべき、諸葛亮の最期をどう描くのか、に期待。

No.2377

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