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(書評)三国志 十三の巻 極北の星

著者:北方謙三

三国志〈13の巻〉極北の星 (ハルキ文庫―時代小説文庫)三国志〈13の巻〉極北の星 (ハルキ文庫―時代小説文庫)
(2002/06)
北方 謙三

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蜀による度重なる北伐。魏の大将軍・曹真は、焦りの色を見せながら漢中制圧に乗り出す。迎撃の軍を出す蜀。雨で両軍、動きを取れぬまま、撤退という中、司馬懿は魏の軍権を確実に掌握していく。一方、魏の攻撃を除けた諸葛亮は、志を果たすべく、再びの北伐に出て……
シリーズ最終巻。
最終巻の今巻は、冒頭に書いた魏による漢中侵攻、そして、第四次、第五次の北伐。諸葛亮と司馬懿の対決、というそれを描ききった、という形になっている(途中、他の視点が入るとは言え) 知将と呼ばれる両者の対決だけに、直接的な両軍の激突というよりも、何を取るのか、という両者の思惑の上での心理戦が素晴らしい。
劉備時代からの伝統もあり、強兵を誇る蜀軍。しかし、蜀にとっては、一回の戦いで勝利をしても、そこに意味はない。北の地、という「実」がなければならない。軍の激突、という上では次々と魏を破っても、「実」が取れないままに撤退を余儀なくされる諸葛亮。反対に、軍の激突では敗れても、決して「実」は与えない司馬懿。諸葛亮の派手な戦略も、非常に魅力的なのだけど、「実」を守るためには臆病者と言われることも、部下の首を刎ねることも厭わない司馬懿のやり方も光る。シリーズの最後を飾るにふさわしい、対決ではないかと思う。
物語最後の舞台となる五丈原の戦い。長期戦となり、徹底的に「守る」ことを貫く司馬懿と、その守りを見越した上で、「実」を手に入れようとした諸葛亮。諸葛亮の戦略が上手く動き出したところでの……。「志」を持ちながら、常に何かが足りずに敗れたその最期もまた……。
一般的には、このあと、有名な「死せる孔明、生ける仲達を走らす」という故事のエピソードがあるけど、そういうものはなく、ただただ、静かに幕を下ろす。確かに、故事として偉大さを示すことにはなるけど、志半ばで死んだ諸葛亮と言うことを考えると、そういうものはなく静かに幕を下ろすのがベストだったと思う。
史実で考えれば、このあと、司馬懿の実験を握る、とか、葛亮の後継者・姜維によるさらなる北伐とか、色々と読んでみたいエピソードは色々とある。それを含めて、余韻を残すな、と感じる。
シリーズを通して見ると、著者が創作したキャラクターがかなり多く登場したり、著者独特の解釈による武将観が後半は、結構、通説に近いものになった、なんていう風に感じるところはあった。でも、全編を通して、それぞれの思惑だとかが活き活きと描かれていて、最後まで一気に読み通すことが出来た。
『三国志』を通して読んだのは、かなり久しぶりだったのだけど楽しかった。

No.2380

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