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(書評)さくらの丘で

著者:小路幸也

さくらの丘でさくらの丘で
(2010/08/31)
小路 幸也

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「さくらの丘」を満ちるたちに遺す。亡くなった祖母が、孫である満ちるに託した遺書には、故郷の「さくらの丘」と呼ばれる場所が、姉妹のように育った3人の共同の所有地であること、それを孫たちに相続させること、が記されていた。早速、その祖母の幼馴染みの孫たちと連絡を取った満ちるは、叔父も加えた4人でその「さくらの丘」を訪れ……
物語は、冒頭に書いたような、祖母の遺言を受けた満ちるが、同じく祖母の幼馴染みの孫娘たちと「さくらの丘」を訪れ、その秘密などを調べていく現代パートと、その祖母たちが娘時代、「さくらの丘」で起きたことを描いた過去パートを交互に入れる形で構成されている。
優しさに溢れている。
これについては、著者のこれまでに読んできた作品と同じであると言える。ただ、本作は、それがあるからこそ、その時代の残酷さ、そして、「戦争は嫌だ」というメッセージをより強調しているように思う。
戦争の傷跡が残っている古き日の村。そこで暮らす3人の少女の前に現れたのは、村から出て行かざるを得なかった姉のような存在と、アメリカ軍から脱走してきた優しいアメリカ人男性。村に入ることが出来ない2人を匿いながらも、協力してくれる大人も現れ、全てが解決した……と思った矢先の出来事。勿論、子供だからの甘さ、とか、そういうものはあったのだし、ある意味では、村の、社会のルールを破っているのは彼女たちではある。でも、それだって、全て彼女たちが悪いのか、といえばそうではない。全ては……
「孫の代になれば……」
少女時代の、祖母たちの決意というのは、とても重く、そして、強い願いが込められていたんだ……というのを思う。
きれい事だ、と言えば、そうかも知れない。でも、この作品は、そういう形で書いているからこそ、よりメッセージ性が強く感じられるものとなっているように思う。
著者の作品は、これまでも色々と読んできたが、その中でも本作は一二を争うくらいに好きだな、と感じられた。

No.2384

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