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(書評)南の子供が夜いくところ

著者:恒川光太郎

南の子供が夜いくところ南の子供が夜いくところ
(2010/02/27)
恒川 光太郎

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数年ぶりに訪れた家族旅行。タカシの家族は、そこで「120歳の魔女」だというユナというお姉さんと出会う。借金を重ね、最後の晩餐と一家心中を考えていた一家だったが、ユナの勧めもあって、南の島で、ばらばらになったものの、新たな生活を送ることになって……(『南の子供が夜いくところ』)
からの、連作短編集。
これまで読んだ経験から言うと、著者の作品の特徴というのは、極めて独特な、特殊な世界観を作り上げていく、ということのように思う(無論、その中での心情描写なども光るわけだが)
そういう点で言うと、本作も「特殊な世界観」が描かれており、カラーは継続されている。そこで描かれているのは、大航海時代、欧州によって滅ぼされてしまったような世界。古いしきたりを守ってきた一族。島の中の世界のパワーバランスを破壊してしまった外部の力。そんな世界で力のみを頼りに生きてきた男。それぞれ、タカシ、ユナのいる時代とは全く異なっているのだが、しかし、その世界とタカシのいる世界が不思議な力でつながる。
とにかく、この「島」それを囲んでいる広大な「海」が、違和感を感じずに世界へ没入させる道具として生きているのだろう、と思う。1編目の表題作で、現代の日本という世界を見せて、そこからタカシを全く異なった世界へと移動させる。そして、その上で、海の先が見えなかった時代などを描く。その相乗効果によって、海の向こうに未知の世界がある。そう感じさせるのだ。
そして、そういった物語が次々とつづられた最後にあるのは、現代の人間であるタカシの父が、『不思議の国のアリス』のような目まぐるしく世界が展開する『夜の果樹園』。時空を超えて、という流れがあった上で、なので、これもまたさもありなん、という風に思えてきた。
海の向こうには、未知の世界がある。
すでに現実には、ほぼすべての地形やら何やらがわかっているのだけど、でも、と感じさせる。それは、この積み重ねによるものだろうな、と思う。

No.2393

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