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(書評)ファルナースに捧ぐ

著者:大石直紀

ファルナースに捧ぐ (小学館文庫)ファルナースに捧ぐ (小学館文庫)
(2004/10)
大石 直紀

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「いつか迎えに来る」 16年前、旅をしたイランで、浅野はファルナースと恋に落ちながら、その関係は引き裂かれた。大阪府警の刑事となった浅野の前に、その当時の関係者が現れて……
著者の作品、特に初期の作品というのは、世界史上の事件などを題材にして、というのが多いが、本作もその系統に入る作品だと思う。ホメイニ師によるイラン革命、その後から始まったイラン・イラク戦争に、その背後にあるイラン国内のイスラム原理主義の盛衰。それぞれについてかなり勉強しているのだろう、と思う。
それを感じるのは、イラン・イラク戦争中のイランでの様子。イスラム原理主義による政権が成立し、イラクとの戦争も続いている。けれども、実のところ、戦火を交えているのは前線のみであり、国内はそれほど危険とは言い難い。ただ、一方で、戦争による雰囲気や、原理主義思想の政権にウンザリとしている人々も多く存在する。教科書とか、そういうのではわかりづらい部分であるし、世界中を歩いていた、なんていう著者の経歴を考えると、当時のイランにも足を運んでいたのだろうか? というようなことを思わずにはいられない(丁度、チリのピノチェト失脚とかと時期的にも近い)
そういったイラン・イラク戦争時のイランでの浅野の日々と、現在の事件を交錯させる形で物語は展開。
ただ、イラン・イラク戦争当時の情勢だとかに比べると、現在の事件は乱暴な展開かな、と思う。そして、浅野とファルナースの関係についても、ちょっと表面的にさらっとなぞっただけのように感じてしまう。浅野についてはともかく、ファルナースに関しては、イスラム原理主義グループに洗脳された、とか言いながらあまりそれが感じられないし、また、嫌っていた兄に協力したり、暴力団との繋がりとか、ちょっと無理があるように思える。
分量的なものもあるのだろうが、最近の『夢幻漂流』とかを読んでいるだけに、ちょっと物足りなさを感じる。

No.2400

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