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(書評)こころげそう

著者:畠中恵

こころげそう (光文社時代小説文庫)こころげそう (光文社時代小説文庫)
(2010/08/10)
畠中 恵

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下っ引きの宇多、その幼馴染みであり、密かに想いを抱いていた於ふじが、兄・千之助と共に神田川に落ちて死んでいるのが発見された。自ら落ちたのか、それとも……。ところが、何と於ふじが幽霊となって戻ってきて……。
という連作短編集。
単行本のときは、『男女九人お江戸の恋ものがたり』というサブタイトルがついていたように、それぞれ事件が起こって、真相を、という形を取りながらも幼馴染み9人の恋模様が物語の中で大きなウェイトを占めている。
小さい頃、男女の壁もなく、いつも一緒にいた面々。その中で互いに恋が芽生えて、そこで人間関係が入り組んで、というのは現代を舞台にした作品でも定番と言えるような設定。本作の中でも、そのお約束のように、三角関係などが入り組んで、というものが描かれる。
ただ、この江戸時代、という舞台が大きく影響しているのは、考え方などに制約がどうしても出来てしまうのだな、という点。
現在であれば、家だとか、身分だとかって、全く無関係……とまではいかないにせよ、無視しようと思えば出来るもの。親の反対を押し切ることだって可能。ところが、この時代であれば、まず「お家」というものが大きいし、また、家格だとか、そういうものも。本作に出てくる幼馴染みたち、というのは町人であるから、武士階級のそれと比べれば垣根はないのだろうけど、それでも現在では考えられないくらいに「お家」の意識が高い。店を継ぐ、ということによって引き裂かれてしまう恋などが沢山現れる。そういうのを考えると、当時は、そういった形で泣く泣く、というのは多かったのだろうな……とか、作中のものを離れたところまで考えてしまった。
そんなことを考えつつ、『しゃばけ』シリーズのように、こちらは幽霊になった於ふじが散歩して、とかのようなファンタジー描写もある。そういうのを自然に入れてくる辺りは、やはり著者らしいな、とも感じた。そんな於ふじに想いを抱いている宇多と、宇多の周囲にいるお絹の三角関係の部分が、終盤は全くなくなってしまった点だけはちょっと残念なのだが。でも、気になったのはそれだけ。
ちょっと切ない恋愛ミステリ、面白かった。

No.2401

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COMMENT 4

そら  2011, 02. 03 [Thu] 15:04

たこやきさん、こんにちはっ♪

>単行本のときは、『男女九人お江戸の恋ものがたり』というサブタイトルがついていたように

文庫ではサブタイトルが外されているんだね。
私でも思いつくサブタイトル。
あまりにベタだったのかな(笑)

>江戸時代、という舞台が大きく影響しているのは、考え方などに制約がどうしても出来てしまうのだな、という点。

こういう制約が恋愛物語には必要なのかもしれないね~なんて、
不謹慎なことも考えました。

>ちょっと切ない恋愛ミステリ

でしたね~。おもしろかったです。



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たこやき  2011, 02. 06 [Sun] 19:24

そらさんへ

>文庫ではサブタイトルが外されているんだね。
>私でも思いつくサブタイトル。
>あまりにベタだったのかな(笑)

じゃないでしょうかね?
私自身は、そのドラマは見ていないのですが、それでも、どういったものなのか、は、知っていますし。

恋愛モノ、特に結婚とか、そういうものを扱う作品に、制約というのは必要なのかな、というのは思います。
考えてみれば、『ロミオとジュリエット』とか、ああいうのも、その制約があるから、なんですよね。
学生とかを主役にした「恋愛」とは、また違う部分もありますしね。

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そら  2011, 02. 09 [Wed] 20:20

>恋愛モノ、特に結婚とか、そういうものを扱う作品に、制約というのは必要なのかな、というのは思います

私もこれ、思いました(*^^*)
『ロミオとジュリエット』も、やっぱり同じように思い浮かべました。
…とすると。
今の時代、恋愛も結婚も、「物語」にはなりにくいわね~^^;
できちゃった婚が多くなるのもムリはない…かも。。。
と、年頃のムスメを持つ私は妄想が爆走したのでした(*^^*)

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たこやき  2011, 02. 13 [Sun] 10:30

そらさんへ

確かに、あまりに自由すぎるから、っていうのはあるでしょうね。
ある意味では、病気とか、そういうのを、という作品が目立つ、というのも、その中で普遍的に使える制約、という風にも言えるのかも知れません。

できちゃった婚については……個人的には、本当に増えているのかな? とかも思うのですが(ただ、結婚の際に発表しないで済ませてしまう、というのでばれないでしょうし)

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  •  「こころげそう」 畠中恵
  • これって,まるで「男女9人江戸物語」だわ。 と思っていたら, 副題が,「男女九人お江戸の恋物語」になっていました。 考えることは同じなのね~と思いました。 (Amazon見るまで,副題の存在に気がつい...
  • 2011.02.03 (Thu) 15:11 | 日だまりで読書