著者:奥村紀一
戦後、日本での出産は家から病院出産へと移行した。現在、社会問題となっているアレルギー、自己中心、虐待、ひきこもり、ニート、それらは全てこの病院出産と、そこに由来する母子分離の子育て、母乳の軽視が原因である!
…ということなのだが、明らかにおかしな部分が首を捻らざるを得ない部分が多かった。私は、医学に詳しいとは言い難いのだが、それでも、である。l
まず、著者は、母子は母乳、そして、抱っこなど触れ合いをすることで絆が強くなる、と言う。そして、近年の児童虐待の増加はそれが原因であるという。しかし、これはまず統計上の問題を全く考慮していない。というのは、昨今の児童虐待の増加は、法整備などにより介入が可能になったことに由来する部分が大きいためである。また、「5人に1人程度が、虐待をしている」というアンケートも、アンケートの方法に疑問が多い。その具体的な内容と言えば「子供の呼びかけを無視した」などが多いというのだが、これが虐待になるかどうかは頻度によるだろう。日常的に無視しているのならば、それはネグレクトという虐待だが、1度2度してしまった、というのは些細な失敗に過ぎない。質問方法がわからない以上、これを信頼しづらい。
また、著者は、母子が離れると免疫力などが低くなる、ということを言ったあと、「乳幼児突然死症候群」の原因は「うつぶせ寝」などが原因と言われているが説得力に欠ける。母子が離されたことが原因だ、と言う。前者だ、と言い切ることが難しいのは事実としても、著者の言うこともやはり説得力に欠ける(そもそも、突然、呼吸などが止まって死んでしまった、ということの総称であり単一の原因を求めること事態が難しいのではなかろうか?)
また、出産時の事故の減少について「病院出産になったからではない。病院出産が一般的ではない戦前、20世紀初頭から減少を続けている」と言うが、これについても賛同はしがたい。確かに、20世紀初頭から減少しているわけであるが、病院出産が一般的にならなかったら、戦後の減少があったのかどうかは証明できないからである。
さらに、学力の問題に関して「学力低下は教師やカリキュラムではなくて、魚を食べなくなったからDHAが足りないため」なんていうのもどうかと思うし(フィンランドでは、授業時間が少ないけど、国際調査で上位。魚を食べている、というのが理由になっているが、授業時間のほかにカリキュラム、クラスの人数、人口規模など違う要素が多すぎて比較しづらい) また、ニートやひきこもりまで、病院出産のせいだ、など問題な記述は多い(ニート問題は労働問題であり、経済状況などを抜きに語れない)
基本的に、「病院出産=悪、助産師による出産=善」という二分論が多く、しかも、上に書いたような部分など、納得しがたい。
※08年3月12日
本記事を投稿したのは11日であるが、内容に具体性が乏しく、ただの罵倒のような文章となってしまっていたため(忠告も頂いた)、全面を書き直すこととした。見苦しい文章になっていた、前の文章に関してはお詫びします。
通算1180冊目
テーマ : 最近読んだ本 - ジャンル : 本・雑誌
コメントの投稿