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(書評)この国。

著者:石持浅海

この国。 (ミステリー・リーグ)この国。 (ミステリー・リーグ)
(2010/06/10)
石持 浅海

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長らく続いてきた鎖国状態。それを打ち破ったこの国では、とにかく「敵」を作らないことに腐心し、一党独裁の下、二つの世界大戦にも巻き込まれることなく、高い経済成長を遂げた。その国で起こる事件……
相変わらず、変な世界観を思いつくなぁ……(笑) 
最近の著者は、テロと国、みたいな題材を扱った作品が多いのだが(『攪乱者』『見えない復讐』など)、本作は、治安警察のエリート刑事・番匠の側から、事件、そして、テロリストとの戦いを描く、という形になる。
ただ、本作も、極めてツッコミどころ満載……というか、独特の世界を描いている。それは上に書いたような形。それぞれ、事件が起こり、その舞台設定であるが故の理由で、といったものはあるのだけど……その謎解きよりも、むしろ、そこで描かれる世界そのものが印象に残った。
……ぶっちゃけ……
この国、よく維持できているな、という感が強い(笑)
形ばかりの民主主義が取られ、一党独裁政治。国家反逆罪がもっとも大きな罪であり、公開処刑も行われる。一方で、小学校時点で将来の仕事は大きく分別され、その時点で将来の収入も決まってしまう。さらに、軍は戦争経験がないので形ばかり。そして、(ある程度の規制はあるとはいえ)政府批判くらいの表現の自由もある。
……よく、暴動とか起きないよな……と(反政府勢力はあるにしても)
例えば、小学校時代で将来が決まり、這い上がるチャンス無し、となったら、下層の不満は相当に高まるはず。しかも、政府批判くらいなら可能で、挙げ句、軍隊は緩い。チュニジア、エジプトなどの暴動を見て読んだだけに、どうしても思う。
ある意味で、日本そのものを風刺しているのは想像がつく。軍隊についての話なんかは、そういう感じだと思うし(もっとも、自衛隊でも、そこまで緩くないと思うが)、死刑賛成が多いというような国民性など。一党独裁というのも、戦後、殆どの時期を自民党が、というのは近いと言えば近いのかも知れない。それを極端に描いた作品と言えばそうなのだろう。著者なりに、そういうところへの意識を強めているのかな? なんてことは思う。
と言いながら、結局、戻ってくるのはやっぱり、へんてこな世界観だな、ということ。もの凄いイロモノ感をどうしても思う。ま、これはこれで、世界観に心奪われた、といえるのかも知れないが(笑)

No.2468

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COMMENT 2

苗坊  2011, 03. 20 [Sun] 22:22

こんばんは^^こちらにも失礼いたします。
本当に、よくもまあいろんな世界を思いつくなぁと思います。それでも、全く考えもつかない世界とは言えないのがちょっと怖いところだなと思いました。
私も、結局はこの世界観に心奪われたのかもしれません^^;
ただ、絶対に自分はこの世界では生きていたくありません^^;

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たこやき  2011, 03. 24 [Thu] 21:04

苗坊さんへ

この作品のような国って、一つ一つの要素を考えるとすごくあり得ると思うんですよね。
一党独裁で、国家反逆罪が最大の罪で、高い経済成長、なんていう開発独裁体制の国なんかは、それこそ、山のようにありますし……
ただ、全てが揃うと、そんな国は、と感じる。これも一つの著者の狙いだと思いますし、それによって何と無く自分の住んでいる世界からの延長と感じるようになっているのかな、とも感じました。

>ただ、絶対に自分はこの世界では生きていたくありません^^;

については、全く同感です。

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