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(書評)ゲンソウ現実日和

著者:小柳粒男

ゲンソウ現実日和 (講談社BOX)ゲンソウ現実日和 (講談社BOX)
(2009/03/03)
小柳 粒男

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小戦争による傷跡が至る所に残る「街」。その壮絶な体験を心に残したサラリーマン・木鷹田は、小戦争により逮捕された張戸らとの出会いで確実に壊れていく……
シリーズ第3作……で良いのかな?
時系列的には、間違いなく『りべんじゃー小戦争』を前提としており、その中で、平凡な存在であった木鷹田が壊れていく……というのを描いているわけだから。ただ、前作までの登場人物・篠木、張戸なんていった面々は脇に置かれ、あくまでも、木鷹田、そして、彼に関わった者たちの物語。
何とも言えない絶望感。
そんなものが、全編にわたって描かれているな、と感じる。
第1章は、平凡なサラリーマンである木鷹田の視点。ただ、何が何だかわからないまま、小戦争に巻き込まれ、生き残った。そして、逮捕されたのは、自分よりも若い殺し屋。焦燥感などが溢れる中、発見した警察署内の奇妙なこと……
そして、異世界での2章目、その世界から、少年達を日本へ戻しての3章目。それぞれ、視点が異なりながらも、やはり、それぞれの形での絶望が綴られていく。それぞれに共通するのは「平凡であること」。それ自体は、悪でも何でもないはずなのに、圧倒的な事件、圧倒的な希望、圧倒的な変化。その中では絶望へと転化してしまう、というのが何ともやるせない。
大きな展開などがそれほどなく、やや、平坦な感じは受けたのだが、それすらも、この絶望の一つの表現のように感じる。
明らかに、著者のデビュー作から3作で技術なども含めて向上している。是非とも、続編……というよりは、新作を(1作目があまりに微妙なので、続編だとちょっとつらい)出して欲しいのだが……

No.2470

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