著者:千澤のり子
北園中学の吹奏楽部に所属する泉。彼の夢は、担当するホルンを上手く演奏すること。そんな中、耳にしたのは「部内でカップルができると、片方が死ぬ」という噂。そして、その通りに先輩が謎の死を遂げてしまい……
「再読必至」。
仕掛けなどを一つの売りにしたミステリ作品の煽り文句として、このような言葉が使われることがある。本作も、そんな言葉を使ってもおかしくない一作であると思う。しかし、それって褒め言葉と単純に言えるのだろうか? と、ちょっと考えた。
先輩の死から始まる、吹奏楽部内での事件。泉に対する疑惑。次々と起こる事件。それでも、何とか演奏会に向けて、と突き進む吹奏楽部の面々。そんな物語の最後に明かされる仕掛け。途中で何となく、こういうケースがあるかも知れない、とは思いつつも、やっぱり最後に驚いたのは確か。
で、ここで考えたのは、こういう仕掛けの作品を読む際、何を期待しているのか? で評価が分かれてしまうものだろう、ということ。
即ち、作品のネタ晴らしをして、それまでのもやもやが一気に氷解していく。そのカタルシスを楽しむ、というケース。
反対に、ネタ晴らしをした後、再読をすることで、答え合わせを楽しむ、というケース。
本作の場合、非常に緻密に計算、構成された作品である。であるが故に、読んでいる最中は、殆ど違和感を感じないで、仕掛けに驚くことができる。しかし、あまりに緻密に描かれているため、その構成の妙を完全に理解するには答え合わせをするように考えながら再読をしなければならない。その分、カタルシスが弱くなってしまう部分があるのではないか? と感じてしまうのだ。勿論、それは先にも書いた通り、最初に何を期待しているか、によって左右される部分も多いはずだが。なんで、こういうことを考えたのか、というと、私は前者の期待をしながら読んだから、ちょっと、もやっとした、というだけなのだが。
ともかく、そういうことを言いつつも、その計算、構成など、非常に完成された作品であるのは間違いない。
No.2480

![]() | シンフォニック・ロスト (講談社ノベルス) (2011/02/08) 千澤 のり子 商品詳細を見る |
北園中学の吹奏楽部に所属する泉。彼の夢は、担当するホルンを上手く演奏すること。そんな中、耳にしたのは「部内でカップルができると、片方が死ぬ」という噂。そして、その通りに先輩が謎の死を遂げてしまい……
「再読必至」。
仕掛けなどを一つの売りにしたミステリ作品の煽り文句として、このような言葉が使われることがある。本作も、そんな言葉を使ってもおかしくない一作であると思う。しかし、それって褒め言葉と単純に言えるのだろうか? と、ちょっと考えた。
先輩の死から始まる、吹奏楽部内での事件。泉に対する疑惑。次々と起こる事件。それでも、何とか演奏会に向けて、と突き進む吹奏楽部の面々。そんな物語の最後に明かされる仕掛け。途中で何となく、こういうケースがあるかも知れない、とは思いつつも、やっぱり最後に驚いたのは確か。
で、ここで考えたのは、こういう仕掛けの作品を読む際、何を期待しているのか? で評価が分かれてしまうものだろう、ということ。
即ち、作品のネタ晴らしをして、それまでのもやもやが一気に氷解していく。そのカタルシスを楽しむ、というケース。
反対に、ネタ晴らしをした後、再読をすることで、答え合わせを楽しむ、というケース。
本作の場合、非常に緻密に計算、構成された作品である。であるが故に、読んでいる最中は、殆ど違和感を感じないで、仕掛けに驚くことができる。しかし、あまりに緻密に描かれているため、その構成の妙を完全に理解するには答え合わせをするように考えながら再読をしなければならない。その分、カタルシスが弱くなってしまう部分があるのではないか? と感じてしまうのだ。勿論、それは先にも書いた通り、最初に何を期待しているか、によって左右される部分も多いはずだが。なんで、こういうことを考えたのか、というと、私は前者の期待をしながら読んだから、ちょっと、もやっとした、というだけなのだが。
ともかく、そういうことを言いつつも、その計算、構成など、非常に完成された作品であるのは間違いない。
No.2480

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