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(書評)最初の哲学者

著者:柳広司

最初の哲学者最初の哲学者
(2010/11)
柳 広司

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ギリシア神話をモチーフとした13編を収録した短編集。
……という説明で良いのだろうか?
収録13編のうち、最後の1編『ヒストリエ』を除いて、各編の分量は十数頁ほど。それぞれ、オイディプスであったり、ダイダロスであったり、ミノタウロスであったり、と、神話の物語を題材にとって描かれる。私自身、ギリシア神話について体系的に知っている、というよりは、断片をそれなりに、というレベルなのではあるが、それでも自分が知っている物語とは解釈が異なっているなどし、それはそれで楽しむことが出来た。
が、読み終わって考えると、初出が雑誌連載分である12編の作品というのは、全て、最後の編のための伏線なのだろうか? というのを感じずにはいられない。
というのも、『ヒストリエ』だけ、30頁あまりと分量が多く、そして、各地を放浪し、様々な物語を記録し、また語っていたヘロドトスの物語となっているからである。幼い頃から変わらず、「なぜ?」という疑問を抱き続けてきたヘロドトス。そんな彼は、各地を旅し、そこで知った、記録した物語を次々と都市国家で披露する。
そして、そんなヘロドトスがペリクレスから依頼された仕事。それは、ペルシア戦争について書き記す、ということ。
先の12編というのは、まさしく、そのヘロドトスが記録し、語ってきた物語なのだろう、と感じるし、また、そんな彼だからこそ、ペルシア戦争について、様々な角度から検証し、その全体像を書き記せたのだろう、とも。
歴史とは、記録である。
正直なところ、各編の話が、もの凄く面白い、とか、そういうのをあまり感じなかったのだが、それも含めて、そのメッセージのための伏線となっていたように感じる。1冊の短編集、としての完成度は高い、と言えると思う。

No.2527

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