著者:東野圭吾
東京、日本橋。麒麟の像にもたれていた男には、ナイフが刺さっていた。間もなく男性は死亡。そして、その男性の鞄を持っていた男も、警察を振り切ろうとして事故に遭い、意識不明の重体となる……
加賀恭一郎を探偵役とした作品の1つ。
本作の場合、『新参者』と同様、「事件の終わり」とは何か? というのを一つのキーワードにしていると思う。
被害者は死亡し、容疑者からも話を聞けない状況とはいえ、その鞄を持っていた、という事実がある。しかも、被害者と容疑者には、接点があり、その中で、容疑者が被害者を恨む動機もある。いくつか謎は残っているものの、事件は解決したも同然……というのが、警察の立場。ある意味では、犯人逮捕で終わり、というのは、ある意味、刑事ドラマとも一緒。
けれども、それだけでは終わらない。
接点が明らかになるにつれ、被害者は、純粋な被害者でなくなっていき、また、容疑者の身近でも、批判が高まっていく。どちらの側も、事件の波紋は収まるどころか、広がるだけ。
正直なところ、当初、単なる強盗殺人とされていた段階で、マスコミが大挙して被害者宅に訪れるのだろうか? という疑問はある。そこは、ともかくとしても、事件の背景などについて憶測が広がることでどちらも傷ついていく、というのはあるだろう。また、警察の捜査、そして、マスコミへのリークといった部分で、犯人はこいつだ。こういう理由だ、というムードが高められていってしまう、というのは、直接的なテーマとは違うにせよ「冤罪」の問題とも重なるように思う。
そんな中で、ただ一人、加賀だけは、残った謎も解明する、というのを貫いて、「本当の」真相へと辿り着く。この辺り、やはり、先入観に囚われず、ただただ事実だけを重ねる加賀の人物というのが強調されているように思う。そして、傷つくことがあっても、全てを明らかにすることで、次への一歩が踏み出せる、というメッセージ性も同時に持っているのではないかと感じた。
そういったのも含めて、しっかりと書かれているのは見事だと思う。
ただ、被害者と容疑者の接点の問題についての真相は、結局、どうだったの? 唯一、そこだけが気になる。
No.2534

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テーマ : ブックレビュー - ジャンル : 小説・文学
加賀刑事の粘り強い捜査は脱帽ですね。
無理矢理真相をまとめようとする刑事たちとは違います。
自分の足で納得するまで歩き続ける姿が素敵でした。
ただ真相だけを求めるのではなく、残された人たちにとってもちゃんと終った事件とすることが大事なんですよね。
最後の部分はハッキリしないで終わりましたよね。会社側が「死人に口なし」と言う事で責任を全て押し付けたのだと思いたいです。
苗坊さんへ
これも、そこまでほかの刑事を責められるのか? というと違うと思うんですけどね。
「白紙の状態で」といっても、実際にそうできるほど、人間って割り切れるものではないと思いますし。
言い換えれば、それができる加賀のすごさが垣間見える、ということだと思います。
そして、それを突き詰めることで、というのも説得力があったように思います。
被害者と容疑者の関係の真相は、これ、何ともいえないんですよね。
苗坊さんは、責任を押し付けた、と信じたい気持ちはわかります。でも、逆に、報道されたのが真実だったとしても、人間が善か悪か、の二分論で語れないものだ、ということで深みを感じます。
この辺りは、それぞれの想像に任せる、ということなんですかね?
確かに加賀刑事はそこにこだわっていますよね〜。
何冊か加賀刑事シリーズを読んで,
私も大事なことだと思うようになりました。
>正直なところ、当初、単なる強盗殺人とされていた段階で、マスコミが大挙して被害者宅に訪れるのだろうか? という疑問はある。
うんうん。私も「ん?」と思いました。
さらっと忘れていたけれど(^^;)
>害者と容疑者の接点の問題についての真相は、結局、どうだったの?
ここが曖昧だったせいで,
ちょっと回収不足…って印象を残してしまいましたよね〜。
そんなにページ数割かなくても,何とか詰め込めるような気がするんですけど。
…無理かしら(^^;)
>傷つくことがあっても、全てを明らかにすることで、次への一歩が踏み出せる
いいメッセージだったと思います♪
そらさんへ
>
> 確かに加賀刑事はそこにこだわっていますよね〜。
> 何冊か加賀刑事シリーズを読んで,
> 私も大事なことだと思うようになりました。
特に、ここ最近の加賀シリーズでは、そういう面が協調された感じがします。初期の頃は、丹念に調べて犯人を追い詰める、という感じでしたけど……
でも、確かに犯人を捕まえる、だけではないですよね。
> >害者と容疑者の接点の問題についての真相は、結局、どうだったの?
>
> ここが曖昧だったせいで,
> ちょっと回収不足…って印象を残してしまいましたよね〜。
> そんなにページ数割かなくても,何とか詰め込めるような気がするんですけど。
> …無理かしら(^^;)
私もできたんじゃないかと思います。
仮に被害者が労災隠しをしていたとしても、そうでないにしろ、どちらにしてもその息子である少年の成長の糧として使えたでしょうし、うまく活かして欲しかったな、と思います。
でも、真実を知ることで、というメッセージはしっかりと伝わってきて、(加賀シリーズ最高傑作かどうかはともかくとして)出来自体はよかったな、と思います。
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