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(書評)オジいサン

著者:京極夏彦

オジいサンオジいサン
(2011/03/10)
京極 夏彦

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益子徳一、72歳。勤めてきた会社を定年退職し、一人、公営住宅に暮らす日々。そんな彼の一週間。
……うん、本当に、それだけで内容を紹介できている気がする(笑)
とにかく、何がある、ということもない。
ただ、生真面目で、ちょっと臆病で、時代の変化についていくのに苦労している老人、徳一。その一方で、他人に迷惑をかけない、という矜持も持っている。その徳一がちょっとしたことに戸惑い、悩む。そんな様子がつづられる。
無論、その悩むといっても、かなり小さなこと。
例えば、カセットテープは燃えるごみなのか? 燃えないごみなのか? 試食コーナーでもらったものを食べてしまったが、何も買わずに出てよいのだろうか? といったようなこと。これでもか、というくらいに小さなこと。それを気にする、というところに臆病さとか、生真面目さが現れている、ともいえるのだが、ここまで大きく悩まずとも似たような経験はあるように思う。
最初は、やたらと自問自答する徳一の独白という文体に、ちょっと入りづらさを感じたのだが、詠み進めるうちにだんだんとこなれてきたように思う。そして、何でもないところに悩む徳一の姿が、だんだん、身近なものに感じられてきた。
本作の場合、1週間の様子を淡々と描く、というのだけど、その中で、徳一と並んで印象に残るのが、徳一が良く通っている電気屋の二代目。
先代と比べて商才がない、とか、徳一にすら散々な言われ方をするけど、でも、徳一は、電球1つ買うのにも、わざわざその店へと向かう。そして、2代目もそんな徳一に対して、細かく気を使っている。そんな様子が伝わってくる。
ラストシーンを演出するのも、その2代目なのだけど、そこまでの徳一の姿を見ると、2代目の気持ちというのも良くわかる。慕っている、というのも伝わってくる。
徳一に、血のつながった家族はもういないのかもしれない。でも、徳一のことを大事な存在と思っている人はちゃんといるんだ、というのは、淡々としているけど、何かほのぼのとしたものを感じた。

No.2560

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