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(書評)犬とハサミは使いよう

著者:更伊俊介

犬とハサミは使いよう (ファミ通文庫)犬とハサミは使いよう (ファミ通文庫)
(2011/02/28)
更伊 俊介

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「読まずに死ねるか!」 重度の活字中毒少年の春海和人。そんな彼は、ある日、立ち寄った喫茶店で、強盗に襲われ、殺されてしまう。しかし、そんな和人は、執念で生還を果たす……ダックスフントの姿になって。本が読めず、もだえる和人の前に、犬となった和人の言葉がわかる夏野霧姫というサド女が現れ……
第12回ファミ通文庫えんため大賞優秀賞受賞作。
作品の紹介文では「ミステリ系不条理コメディ」と書かれているけど、ミステリ色は薄いかな? というのを思う。和人を殺した強盗犯を探す、という要素なんかはあるけど。
とにかく、この作品の売りは、犬になった和人と、ハサミを凶器として使う霧姫のやりとりだと思う。
霧姫は犬になった和人の言葉がわかる、と書いたけど、実のところ、言葉そのものというよりも、思考が読める、という方が正しい。だから、表面的には従っても、心の中で悪態をついた、なんていうのもしっかりと伝わるし、それが伝わって、ますます、暴力的に従わせよう、という霧姫の行動がエスカレート。ある程度、お約束のパターンにはなっているのだけど、それが形式美としてのギャグに繋がっているように思う。
で、そのヒロイン・霧姫も、かなりエキセントリックではあるものの、終盤に、自分を助けようとして強盗に殺された和人に見せるちょっとした心情がかわいい。274頁の霧姫の思考……よくよく聞いていると、かなりきわどいと思うのだけど(笑)
一方で、主人公は……気持ちはすっげぇわかる!
とりあえず、ひたすら何か読んでいたい、ってのは、物凄くわかる。流石に、その日に入荷した新刊本をすべて購入とか、そこまではしない(できない)けど。月10万円の仕送りで、その生活、どうやってしているんだろう? 食費、光熱費なんかを差し引くと、月に自由に使えるのは、半分くらいになるはず。今の自分の読書ペースで、読んだ本をすべて購入していたら、月に3万~4万くらいになっている。主人公・和人の場合、明らかにそれを上回るペースだから……
とか、全く内容に関係のない思考に頭をめぐらせてしまった(ぉぃ) そんな霧姫、和人のほかに、本当にちょい役ではあるのだけど、書店のおっちゃんとか、犬になった和人を拾ったペットショップのアフロ店長とかが良い味を出していた。
もっとも、気になる箇所がないわけではない。
例えば、霧姫が犬になった和人をペットショップまで迎えに来た理由。心が読める、といっても、全く距離とか関係ないのか? とか、そういうのは不明。また、なんで通じるようになったのか、も説明なし(これは、それを想像しろ、ということなのかも知れない) あと、強盗犯との格闘とかは、正直、どーでも良かったかな、と。あとがきによると、著者というのは、コンビ作家とのことだけど、その中で、それぞれが得意な描写とかを入れようとした結果では? とか、勝手な想像をしてしまった。
でも、概ね、楽しく読めたのは事実。
既に続刊は出ているわけだけど、和人と霧姫のやり取りの楽しさを次巻も楽しみたいな、と思う。

No.2580

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