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(書評)メルカトルかく語りき

著者:麻耶雄嵩

メルカトルかく語りき (講談社ノベルス)メルカトルかく語りき (講談社ノベルス)
(2011/05/10)
麻耶 雄嵩

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銘探偵・メルカトル鮎。その事件の現場に、作家である美袋を伴って彼は現れる。全5編を収録した問題作。
いや、確かに「問題作」だよ、これは! 色々とぶっとんだ作品を書いてくれるのが著者ではあるが、メルカトルを中心にしたものはその桁が違うな、というのが第一。
物語の形式だとか、そういうのも含めて、まず頭に浮かんだのは、同じくメルカトルと美袋のコンビが次々と事件に遭遇して、という『メルカトルと美袋のための事件』。二人の、友人というにはゆがんだ関係であるとか、そういうものを含めて、共通項が多い。
そんな本作の開幕を告げる『死人を起こす』。
1年前、夏休みに遊びに行った建物で起きた死亡事故。それから1年、当時の仲間で集まったところ、再び、事件が……。遅刻してきたメルカトルが示す真相は……。
それで良いのかよ!!(笑) いきなりツッコミどころ満載の解決編に大笑い。よく、それでみな、納得したなぁ……(笑) でも、これはまだまだ序の口。
カバー裏の紹介文でも綴られる『答えのない絵本』。
学校内で殺害された教師。容疑者は20人からの生徒たち。それぞれの証言を元に、アリバイを調べ、事件の真相へと迫る。ある意味、きわめてストイックなミステリの形式をしている。そこで綴られた真相は……
お~~~~~~~~い!!(笑)
いや、それを答えにしてしまって良いのかいな。そこから一歩進めるのが、あんたの仕事とちゃうんかい! そんな感情を抱く私は何か間違えているのだろうか?
とにかく、この作品に限った話ではないのだが、麻耶雄嵩作品におけるメルカトル鮎という人物は、頭は抜群にさえる。ただし、聖人君子でも何でもなく、野心があり、金も大好きな俗人である、ということが最大の特徴だと言えるのだろう。それは汚い、とか、そういうこともいえるのだが、しかし、人間ってそんなものだよな、とも思える。そんなこともテーマにあるのかも。
昨年発売された『貴族探偵』、『隻眼の少女』。あれも、好き嫌いがはっきりと別れる作品だが、本作は、それ以上(のはず) そんな癖のある著者が大好きだ。
……てか、よく、メルカトルに依頼する気になるよな……依頼人たち……

No.2582

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COMMENT 4

-  2011, 07. 06 [Wed] 15:08

美袋と同じように馬鹿な読者を騙すために書かれていますね。
絵本。
メルカトルは部屋のタバコの煙黙っていましたから、
メルカトルの推理自体が大嘘です。メルの推理で一番安全なものが犯人です。
視点人物の目で読者の面前で一番アリバイの確かな土岐が犯人です。

けらけら笑っていることでしょう。作者と麻耶は。

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たこやき  2011, 07. 06 [Wed] 19:53

名無しさんへ

解説、どうもありがとうございます。
私自身、深く考えずに読んだ、美袋と同じような読者の一人ですが、これはこれで好きです。確かに、作者が笑っているかも知れませんが、そうやって作者の手のひらの上で弄ばれる、というのもひとつの醍醐味だと思います。

詳しく考察すると発見できる。
そういうところを教えていただき、ありがとうございました。

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-  2011, 07. 08 [Fri] 17:42

いやいや、メルが推理で嘘ついてくるとわかっていながら、
それでも騙されるのが面白い作品ですから。
一話から嘘推理やってるんですよ?
それでも読者は騙されるんですから凄いです。


アニメとスクリーンセイバーで語られる三十分から四十分の鉄壁のアリバイ推理が、
一から嘘とか普通ありえません。
それが麻耶です。

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たこやき  2011, 07. 09 [Sat] 21:00

名無しさんへ

なんか、指摘されたことで、自分がどういう風に読んでいたのか、を思い出して、過剰な反応しました。

確かに、1話から場合によっては、ウソの推理もいとわない、というのは示されているのに、というのはその通りですね。
そして、そのウソを排除して考えると……というのは、前のコメントでもしたように、発見でした。

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  •  論理的な真相は・・・
  • 小説「メルカトルかく語りき」を読みました。 著者は 麻耶 雄嵩 探偵メルカトル鮎とワトソン役といえる美袋三条 事件を解決していく推理モノ 5つの短編からなる構成 なのですが・・...
  • 2013.02.27 (Wed) 00:37 | 笑う社会人の生活