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(書評)ブラッド・スパート

著者:六塚光

ブラッド・スパート (幻狼ファンタジアノベルス)ブラッド・スパート (幻狼ファンタジアノベルス)
(2011/01)
六塚 光

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アルシナという成分を用いた煙草で「幻覚」を実体化できる世界。12年前の反乱掃討戦で、特殊部隊のエースとして活躍し、現在は保険調査員であるトロイ。そんなトロイの元へ、首なし死体の保険調査の仕事が舞い込む。調査を始めるトロイだが、12年前の因縁が現われ……
まず最初に、ちょっと気になったところから書くと、主人公は、12年前の戦争で活躍したトロイと、そのトロイが慕っていた先輩の息子・アーロン(アール)でコンビを組んでいるのだが、序盤、その二人、どっちがどっちなのかわかりづらい、と感じるところがあった。そこで、ちょっと苦労した、というのがある。中盤くらいからは、全く感じなくなったのだけど。
どんな作品か、というと、しょーもない連中が繰り広げる、からっとした裏社会モノという感じだろうか。
「幻覚」を実体化させる煙草は、麻薬と同じような効果もあり、その取引などを通してマフィア組織も暗躍している。ただ、それぞれのやりとりがからっとしていて、陰惨な印象を受けないのが何よりも良いところだと思う。以前に読んだ、著者の『Re;0』なんかにも通じるものを感じる。
物語としても、12年前の戦争とか、背景には色々とあるのだけど、あくまでも最初は、保険調査という決して、この世界だけで通じるものではないところから、というのが上手いと思う。発見された首なし死体は、本当に、保険の加入者だったのか? という調査を始めたところで、ちらついてくる12年前の戦争の際の特殊部隊の影。さらには、ミイラ男の噂なんていうものが出てきて繋がっていく。保険調査というようなところから、終盤は、幻覚を用いたバトル、なんていうところへ話が広がっていくのだけど、すんなりと入れるのは見事だと思う。
作中の事件そのものは、一応、解決したわけだけど、完全に序章とも言うべきところ。
続編も出てくるもの、と思われるだけに、そこでどういう風に繋がっていくのかに期待したい。
「一番の小者」
って……お約束過ぎる(笑)

No.2583

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