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(書評)プロ野球解説者の嘘

著者:小野俊哉

プロ野球解説者の嘘 (新潮新書)プロ野球解説者の嘘 (新潮新書)
(2011/03)
小野 俊哉

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「4番打者が打てば試合に勝てる」「6回が終わったばかり。まだまだ何があるかわからない」 プロ野球を見ていると、解説者がこのような「定説」を述べている。しかし、それはデータに基づかないものが多い。データ分析を通して、プロ野球の事実を記す書。
……と言ったような紹介がされている。
丁度、以前に読んだ『9回裏無死1塁でバントはするな』(鳥越規央著)と同時期に出た書。丁度、同じ時期に、同じようなテーマの書が新書で出た、というのは何かあるんだろうか? ……プロ野球開幕前というようなタイミングだから、というのはあるにせよ。
ただ、『9回裏~』が、セイバーメトリクスとは何か? プロ野球のデータを読み解く指標として、こういうものがある、という紹介をしている部分が多かったのに対し、本書は、より具体的に、こういう場面では、こういうデータがある、というような形の部分がある。
ただ、『9回裏~』と同じようにデータを用いながらも、バントは得点に繋がる有効な作戦だ、と結論付けたり、やはり、データ分析と言いながら、条件付けによって評価が変わるのだな、というのを感じずにはいられない。
まぁ、大体は、ある意味、極めて当たり前のことを言っているだけ、という部分が多いのも事実だが。例えば、第5章の「4割バッターは誕生するか」について、テッド・ウィリアムズの4割は、どのような条件で達成されたのか、とか、データでありながら、ちゃんと物語的に面白いなんていう部分もある。また、第7章の、阪神JFKトリオの活躍などは、データで見ることで改めて「すごい」と感じたりもする。
ただ、そんな中でいくつか気になる箇所はある。
まず、これは『9回裏~』と同様、データの取り方が果たして適切なのか? という部分がある。しかも、いくつかの点について、全く証明できていないものがある。
例えば、第6章の外国人選手について。成功する外国人選手は、どういう条件を持っているのか、について活躍した数人の選手を調べたら、右投手を得意としていた。右投手の方が多いから、それを打てる選手が良いのだ、と結論付ける。しかし、これは全く証明できていない。なぜなら、比較という要素が全くないから。日本で活躍していない選手がどうだったのか、と比べなければダメだろう。
また、「定説の否定」について、言葉の解釈論になってしまっている箇所がある点。冒頭に書いた「4番が打てば勝てる」について、08年の横浜ベイスターズを例に出し、本塁打王と首位打者が居ても、他が弱すぎたので得点力がなかった。4番だけが打っても仕方がない、という。それは間違いない。でも、この「4番が打てば~」というのは、「4番だけが打てばよい」という意味なのだろうか? 普通、4番打者が強いチームは、他の選手の打撃も良い傾向があるし、また、4番打者が強いことでそこへつなごうとしてチーム全体の打撃がアップする、というようなことも起こる。08年の横浜のような特殊な例を出して、「それは違う」というのは単純化しすぎではないか?
「6回が終わっても、まだまだ何があるかわからない」に対して、6回が終わってビハインドのチームの勝率は1割2分4厘しかない。「もう、ほぼ試合が決まった」だ、というのもどうか? 野球が、全54のアウトが取られた時点で、多く点数を取っているチームが勝利、というものだから、勝率が低いのは当然。その際に、「1割2分4厘」という数字を「まだチャンスがある」と取るのか、「もう殆ど勝ち目がない」と取るのかは、ただの解釈論になってしまう。ついでに言えば、このデータは、10点ビハインドとか、そういうケースも含まれている(そういう点差で、解説者が「まだまだ」と言うことはあまりないだろう) すごく、言葉を単純に取ってしまっているようなところがどうにも引っかかる。
面白いと感じる箇所はあるのだが、同じくらい「?」と感じるところもある書だった。

No.2620

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COMMENT 2

與那覇  2012, 09. 18 [Tue] 16:42

あなたのおっしゃる通りだと思います。ちょっとタイトルがおかしいですよね。正しく言うなら『プロ野球俗説の嘘』とすべきでしょうが、ただ俗説なんてほとんど信憑性がないことぐらい世間様はわかっているわけですから、こんなタイトルにせざるを得ないのでしょう。データ分析はともかく、管理人様の言うとおり、言葉は単純に扱いすぎ、という点には大賛成でございます。

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たこやき  2012, 10. 02 [Tue] 20:45

與那覇さんへ

タイトルに関しては、「俗説では、信憑性が無いから」という理由でこうなったのでしょうね。

データ分析についても、色々と違和感はあると思います。
それ以上に、私自身は、言葉の解釈を都合のよいように扱っているな、とか、そういうところが気になりました。

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