(書評)ばらばら死体の夜

著者:桜庭一樹

ばらばら死体の夜ばらばら死体の夜
(2011/05/02)
桜庭 一樹

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09年秋。改正貸金業法の施行が迫る中、翻訳家である吉野解は、貧乏学生時代に下宿していたアパートで白井沙漠と出会う。妻とは全く違う魅力を持つ、沙漠に惹かれる解だったが……
なんか、久しぶりに、現実的な世界観を舞台にした著者の作品を読んだ気がする。
冒頭に書いたように、物語は09年の秋を舞台とする。消費者金融のグレーゾーン金利などが改正された貸金業法というのが一つのポイント。
相変わらず、どろりとした人物描写が印象的。
翻訳家にして大学講師。資産家の妻を持つ、という、社会的には成功者の解。しかし、それまで苦労を重ね、今なお、自由になる金がないという状況を持つ。一方、ふとしたことから借金をし、そのまま転落していった砂漠。どちらも、身体の関係を結びつつも、決して純粋な愛情という感じではなく、互いに付いて熟知しているわけでもない。そして、その関係は沙漠の要求により、崩壊していく……
互いに後ろ暗いところがある、というような雰囲気は、『私の男』などとも共通する部分があるし、また、砂漠の少し世の中から外れた人間性なんていうのも、これまでの著者の作品を彷彿させるところがある。そういうキャラクターの物語であるので、よく言われる「金が人を狂わせる」のか、それとも「狂っているから金で壊れる」のか、なんていうことをふと思った。
ただ、ここのところの作品と比べて、現実的な世界で綴られるため、沙漠の発想とか、そういうものがちょっと浮いているように感じるところがある。また、いざ、タイトルにもある「ばらばら殺人」について、全く犯人が走査線に浮かばない、というのはちょっと都合が良すぎやしないか? と感じるところもある。また、プロローグの描写と本編でその場面での描写に違和感を感じたりもした。
多少、そういう部分で引っかかった。
著者らしいところは色々と感じるけど、ちょっと薄味というか、ちょっと先に書いた『私の男』とか、『紅朽葉家の伝説』などと比べると印象が弱いかな? という感想。

No.2671

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