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(書評)無名騎手

著者:蓮見恭子

無名騎手無名騎手
(2011/07/30)
蓮見 恭子

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なかなか集まらない騎乗依頼。そして、あがらない成績。そんな状況に焦る女性騎手・紺野夏海は、師匠である調教師・鷹野に呼ばれ、自殺した兄弟子の元騎手の遺品整理に向かう。10年以上も前に競馬界を去った元騎手である加賀は、なぜ、鷹野への手紙を残したのか? 違和感から、加賀が自殺ではないのではないかと思いつく。そんな頃、競馬新聞の騎手欄にその加賀の名が載る、というありえない誤植事件が起きる……
著者のデビュー作『女騎手』の続編に当たる物語。
前作は、上にも書いた女性騎手・夏海の視点で物語が綴られるのだけど、今回は、夏海に加えて、競馬新聞のデータ作成をする翔子、そして、加賀の死体に疑問を持つ刑事・宅間という3つの視点で物語が綴られる。そのせい、でもないのだろうが、ちょっと視点の切り替えで、誰の視点? と戸惑った部分がある。
物語自体は、なかなか興味をそそる展開。
上に書いたような自殺したと思しき元騎手。その名前が、なぜか競馬新聞に。同じ苗字の騎手はおらず、打ち間違えなどではありえないミスはどうして起きたのか? 何のために起こされたのか? さらに、ネット上には落馬負傷した騎手が放置された、という内部告発の映像がUPされ、夏海の周囲では盗難事件。データのミスに関係していると思われる翔子の周囲には怪しげな男。そして、新聞記者の殺害事件……。
次から次へと事件が起こっていくので、一体、最後まで飽きることなくどんどんと読み薦めることが出来た。その辺り、手馴れているな、というのを強く感じる。また、偶然なのだろうが、丁度、これを読む直前に、告発のような形から始まった調査により、JRAの調教師が暴力団との交際があったとして免許剥奪、なんていうのが報じられたので余計に読み薦める原動力が強くなっていたのもある。
物語のテーマというのも、読み終わるとはっきりとする。前作、事件を仕組んだ人間にあったのは、勝利への執念というもの。本作も、それは共通する。「十年に一度の逸材」と呼ばれながらも、事故によって大成できなかった元騎手。騎乗馬が集まらない夏海。同じように勝利に見放され、落馬事故の挙句に放置された騎手。……それぞれ、馬に乗りたい。馬場を走りたい。そして、勝ちたい。そういう思いを胸に秘めた存在。それが事件へと繋がっていく。ただでさえ狭き門であるJRA騎手への門戸。しかし、それを潜り抜けたとしても……。勝負の世界なので、といえばそれまでだが、厳しさ、覚悟などが綴られているように感じる。
……と、ここまでは褒めたのだが、事件の真相、トリックについては無理がありすぎる(笑) 確かに、競馬の世界は狭き村社会なんだけど、でも、いくらマイナー騎手であろうと、下手なアイドルとかと同じくらいは注目される存在。人々の前で馬に乗り、まして、ネットや録画機器で素人も様々な情報を手に入れることが出来るこのご時世に、このトリックは無理がありすぎる。これが20年前、30年前を舞台にしたものならばともかく……
前作からのテーマ性などについては高く買いたいが、トリックの部分でちょっと足を引っ張ってしまったな、という感想を持たずにはいられない。

No.2676

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