(書評)サヴァイヴ

著者:近藤史恵

サヴァイヴサヴァイヴ
(2011/06)
近藤 史恵

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チーム・オッジを巡る物語。
『サクリファイス』、『エデン』の前後を描いた連作短編集。
これまでのシリーズは、白石誓を主人公として描かれてきたのだが、本作では、誓だけでなく、その先輩である赤城が、チームメイトとなり、エースとなる石尾とのやりとりを描いたエピソードも多いので、かなり番外編的な印象が残る。
このシリーズ、いつも、タイトルが作品世界を物凄く反映しているな、という風に感じるのだけどそれは本作も同様。
将来を嘱望されながらも伸び悩み、その果てに死んだ選手。そんな死の一報を聞きながらも、過酷なレースを駆け抜ける誓という『老ビプネンの腹の中』。
目の前で見ることとなった死亡事故。そこで生じたちょっとした恐怖。それは、ロードレーサーにとって致命的なダメージに……(『スピードの果て』)
チームのエースとなった石尾。しかし、メンバーと上手くいかず、しばしば起こる悪意の行動。その犯人は? 動機は?(『レミング』)
などなど、それぞれ、まさしく「生存」をかけた物語が綴られる。厳密に「生命を」守るとなれば、『スピードの果て』で綴られるよう、極限のスピードに対する恐怖を覚えた方が良いのだろうが、それはロードレーサーとしての生存を絶つことになる。ロードレーサーとして生き残るためには、一人で戦うことは出来ない。しかし、ただ自らを殺し、協調をしたからといって、名を上げることも出来ない。
「速く走りたい」
その思いを抱き、そして、その中でどう生き抜いていくのか? 短編ではあるのだが、それぞれの中でしっかりとそんな思いが綴られていたと思う。
勿論、私の場合、シリーズキャラクターである誓という存在があり、シリーズをこれまで読んできたことでの思いいれもあるから、より強くそれを感じるのだ、という点はあると思う。でも、そこまで強く、ではなくとも、この作品だけ単発で見ても、そう感じるのではないかと思う。

No.2677

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  • 他人の勝利のために犠牲になる喜びも、常に追われる勝者の絶望も、 きっと誰にも理解できない。 ペダルをまわし続ける、俺たち以外には―。 日本・フランス・ポルトガルを走り抜け、瞬間の駆け引きが交錯する。 ゴールの先に、スピードの果てに、彼らは何を失い何を得るのか。 自転車ロードレースの世界で奮闘する若者を描いたシリーズ小説の三作目。 前二作は長編でしたが本書は六短編を収録したスピ...
  • 2014.02.04 (Tue) 16:00 | 粋な提案