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(書評)真夏の方程式

著者:東野圭吾

真夏の方程式真夏の方程式
(2011/06/06)
東野 圭吾

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夏休みを伯母の一家が経営する旅館で過ごすこととなった少年・恭平。海底資源の調査が物議をかもす町で、調査のために訪れた研究者・湯川と出会うことに。恭平の滞在する旅館に宿泊することとなった湯川だが、そんな中、宿泊客である元刑事が変死体で発見されて……
ガリレオシリーズ第6作となる長編作品。
まず最初に書くと、これまで、シリーズ長編とは趣が異なる、というのが感じられたこと。
これまでの長編『容疑者Xの献身』、『聖女の救済』は、最初から犯人はわかっていて、という倒叙ミステリの形を取っていたのだが、本作は少なくとも序盤は犯人はわからない(後半にはいると、判明するわけだが) そもそも、殺人かどうかだってわからない、というところから展開する。さらに、色々と言い争ったり、というのがあっても、常に湯川と草薙か内海が顔をつき合わせていたシリーズが本作は、連絡こそ取るものの、距離が離れている。そのため、いつも以上に湯川の心中が読みづらく、そういう点でも別の印象を受けた原因になっているのだと思う。
そして、もう一つは、本作でも感じる最近の著者のテーマともいうべき部分。それは、「事件をどう終わらせるのか?」という部分。本作の前に出た『麒麟の翼』においても同じような部分があったが、本作では、「真相はわかるが、ただそのまま解決したのでは、ある人物の人生が捻じ曲げられてしまう」という部分について湯川が悩むことに。ある意味では、シリーズ初期の湯川では考えられないこと(そもそも、湯川は当初、「子供は嫌い」といっていたから、恭平の宿題を見る、というのも考えられなかったのだが) これは、やはり『容疑者Xの献身』の影響が、と考えるべきなのだろうか。
良いことなのか、悪いことなのか、というのはともかくとしても、作品を通して、人物像が変化していく、というシリーズ作品の特徴というものが感じられた。どちらにせよ、明るいとはいえない、哀しい真相が心に残るのだが。そういうのも含め、読み応えがあるのは間違いない。
ただ……個人的に以下2つの点について不満あり。
1つは、シリーズの特徴であった、科学的、物理的なトリックを駆使したあっと言わせる部分というのがなかったこと。今回の殺害方法も、確かに、科学の応用ではある。しかし、これは私のような専門家ではない人間にも想像がついてしまうのである。その部分に期待していただけにちょっと残念。
2つ目に、最近の著者の作品で感じる「映像化を意識したような描写」が鼻に付いたこと。美しい海、とか、そういうものは魅力的なのだが、恭平とロケット実験をしてその海を撮影とか、なんかいかにも映像作品向けのシーンだよな、と考えると醒めてしまう。いや、私が天邪鬼なだけかもしれないが。
決して出来が悪い作品ではない。いや、良い作品と言えるだろう。
ただ、これまでのシリーズとの違いとか、そういうのも含めると、何か違う、という気持ちも同時に湧き上がってきた、という言葉で締めたいと思う。

No.2687

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  • 2011.10.23 (Sun) 20:36 | itchy1976の日記
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  •  湯川と少年
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  • 2011.12.25 (Sun) 18:05 | 笑う学生の生活
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