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(書評)テルミー2 きみをおもうきもち

著者:滝川廉治

テルミー 2 きみをおもうきもち (集英社スーパーダッシュ文庫)テルミー 2 きみをおもうきもち (集英社スーパーダッシュ文庫)
(2011/07/22)
滝川 廉治

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修学旅行中の事故で亡くなった24人のクラスメイト。その最期の想いをかなえるため、輝美と清隆は動く。薔薇を育てていた少年の、伝えたかった想い。主演女優と脚本家……
前巻の感想で、「まだまだ未完成」と書いたのだが、待望の続編。ただ、「想いをかなえる」のペースが前巻よりも落ちてしまったのはどうしたものか? 1つ1つのエピソードの完成度は高いのだが。
今巻のテーマというのは、どこまですべきなのか? という部分だと思った。
前半は、冒頭の「薔薇を育てていた少年の想い」から。
園芸や、物事の分析にはとても強かった西川。しかし、いざ色恋沙汰となると……。自分が好きだった園芸部の少女・三隅さんに、自分の育てた薔薇とともに思いを……と思っていた矢先の事故。しかし、既に死んでいる、というのは間違いないし、しかも、その三隅さんは家庭に複雑な問題を抱えている……。
好きだ、ということを伝える。生きているときなら、何も問題ないそれを死んでからするとなると、相手に対して重荷を背負わせるだけ。思いを告げるけど、重荷は背負って欲しくない。思い切り矛盾した状態であるわけで、その時点で困難。しかも、家庭の問題という「最期の想い」とは関係のないところまで手を出す必要があるのか? 「思いをかなえる」というのがどこまで踏み込むべきものなのか、そして、最善の方法はどこにあるのか? というのは、今後、続けるとしてもかなり厄介な問題になっていくのだろう、というのを感じる。このエピソードでは、両者が上手く化学反応を起こして、となったけど、そういかないものもあるだろうし……
後半は、映研部で女優と脚本家として、映画作りをしていた従姉弟と残された部長の物語。
自分よりも遥かに才能のあった二人にしなれてしまい、途方にくれる監督。他の部員たちや、輝美らは、何とか盛り上げようとするが……
「鬱病の人に、頑張れ、と言ってはいけない」
なんていう言葉を耳にすることがあるけど、ある意味、それに近いものかも。とにかく、徹底的に絶望に打ちひしがれた状態の部長にとって、周囲の声というのは煩わしいの一言になってしまう。やればやるほど逆効果。勿論、ここまでの絶望は感じていなくても、落ち込んでいるときに下手な励ましをされて苛立った、というのは自分自身もあるだけに部長の気持ち、というのが凄くわかる。最終的に上手くいく、というのはわかりきっているけど、それでもかなり冷や冷やとした気持ちになった。
今回の2つのエピソード、どちらも完成度は高かったと思うけど、個人的には後半のエピソードが好きかな? もう一人のヒロインと言える存在・西多さんのかわいさも込みで(笑)
ただ、最初にも書いたように、まだまだ目的達成には先が長い状態。そして、一人暮らしであるとか、輝美自身の事情の謎。それが解明されることも込みで、3巻目にも期待。
……なので、なるべく早く続編、お願いします。

No.2690

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