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(書評)東京湾岸奪還プロジェクト ブレイクスルー・トライアル2

著者:伊園旬

東京湾岸奪還プロジェクト ブレイクスルー・トライアル2 (宝島社文庫)東京湾岸奪還プロジェクト ブレイクスルー・トライアル2 (宝島社文庫)
(2011/07/07)
伊園 旬

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超一流の侵入スキルを持つ門脇と丹羽。企業のコンテスト優勝を機に、世界中で、そのスキルを用いたデモンストレーションで名を売る日々。そんな中、丹羽の娘・茅乃が何者かに誘拐される。犯人の要求は、3人の資産家が持つアタッシュケースの強奪することだった……
著者のデビュー作『ブレイクスルー・トライアル』の続編。
正直なところを言うと、前作はかなり辛辣な評価を下してしまった。それは、文章が読みづらかったり、設定が甘いと感じるようなところが多かったため。
それに対し、本作は、文章などは非常に良くなったと思う。物語にも入りやすくて、そういう意味ではかなり良いと思う。
ただ、前作と比べると、物語の規模が小さくなってしまった感じがするのが残念。具体的に言うなら、1つ1つの強奪が物凄く小粒なのだ。前半の150頁あまりで3つの標的に対して、情報を収集し、作戦を練って、実行する……ということが繰り返されるので、どうしても駆け足感がある。それをテンポの良さ、として捉えることが出来るなら良いのだろうが。
そこから、物語は、誘拐された子供の側の物語。そして、解放へ……。
個人的に、第2章である、子供側の物語はかなり楽しめた。誘拐されてしまった茅乃とその友人・沙璃亜。閉じ込められた空間の様子から、ここがどこなのか、というのを推理する。脱出路を探り、脱出を試みる。第2章も、ページ数としては50ページとあまり、多いわけではないのだけど、舞台が限定されているのでアッサリという感じではないし、また、完璧にミッションをクリアする父親たちと違い、試行錯誤などをして、という課程が綴られるので難しいミッションに参加している、という気になることが出来た。そういう点で、2章は楽しめた。
しかし、結局、子供たちは失敗し、再び父親の章へ……
こちらも、1章目と同じで、試行錯誤とか、そういうところはほとんどなくアッサリと解決してしまうし、また、裏切り者とか、そういう部分も何もなかったように終了してしまう。何か、緊張感が感じられない。
第1作目で感じた、文章の読みづらさなどといった問題は、良くなっていたが、全体を通すと、天才がアッサリとミッションをクリアしていくだけ……という感じで、何とも物足りなさが残った。

No.2696

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