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(書評)往復書簡

著者:湊かなえ

往復書簡往復書簡
(2010/09/21)
湊 かなえ

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タイトルの通り、手紙でのやり取りによって綴られた3編を収録した短編集。
これまで、著者の書いた作品は基本的に独白形式だったのだが、今回はちょっと視点を変えて手紙形式。もっとも、一人称で、という意味では同じようなもの、という気がするのだが。
正直なところ、一編目の『十年目の卒業文集』はイマイチな印象。
高校を卒業をして十年目に、という設定なのだが、結婚したとか、そういう部分が散りばめられつつも、あまり十年を経過した、という感じがしない。そして、序盤がゴチャゴチャしたことで、何が事件なのか掴みづらくて、上手く物語の中に入り込めなかった。
その中で、個人的に好きなのは、2編目の『二十年目の宿題』。
退職した恩師に、お祝いの手紙をしたためたところから、その恩師が気になっている教え子のその後を教えて欲しい、と頼まれる大場。その気になっている生徒たちに出会い、話を聞く中で恩師の過去にも触れていくことに……
多少、相手に話を聞いて、という独白のような部分があるのはご愛嬌だが、恩師の過去、そして、夫婦愛と言ったものがそこから浮かび上がってくるようで印象的。事故によって喪ったのが生徒なのか、夫なのか? どちらであっても大事な存在を喪うということには違いない。そして、その中でどちらを優先すべきなのか?
どちらを選んでいたとしても正解であり、不正解なのだと思う。
その恩師の苦しみというのがまず頭に浮かんだ。
そして、その事故によって傷ついた子供たち。トラウマとか、そういうのはあまり好きな言葉ではないのだけど、事故によって命を喪いかけた本人は「助かってしまった」ことが重荷になってしまう。そして、事故の原因となってしまった子供はそのことがずっと引っかかる。
恐らく、恩師には悪意などはなかったのだろうけど、大場に調査をさせることによって結果として、大場を苦しめる結果になってしまう、という皮肉な結果も印象的。一種の悲恋モノとして楽しむことが出来た。
でも、まだ完全に「終わった」わけではないわけで、そこに希望を見出せば良いのかな? とも同時に感じた。

No.2711

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