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(書評)小暮写真館

著者:宮部みゆき

小暮写眞館 (書き下ろし100冊)小暮写眞館 (書き下ろし100冊)
(2010/05/14)
宮部 みゆき

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両親の気まぐれにより、商店街の中に立つ「小暮写真館」が新たなマイホームとなった花菱家。亡くなったかつての店主が店番をしている、と噂されるその家で、写真館を営むわけでもないのに看板を出したところから、ここで現像された、という奇妙な写真が持ち込まれて……
というところから4編の連作短編……というか、ぶっちゃけ、連作長編でもよさそうな作品。
なぜ、そんなことを言うかというと、1編目の『小暮写真館』は130頁弱だけど、あとは200頁程度の分量がある。短めの長編作品1本くらいの分量があるというわけ。
で、正直なところ、読みながらまず頭に浮かんだのは「長い……」という思い。
基本的には、主人公である花菱英一(通称・花ちゃん)が心霊写真(?)を調べて欲しいと依頼され、その謎を解き明かす、というような形で綴られる。その間で、花ちゃんの両親、年の離れた弟の光(通称・ピカ)、学校での日々、調査を通して知り合った不動産屋の社長や口の悪い事務員・順子らとのやりとりも含まれる。著者の作品らしく、それぞれのキャラクターはしっかりと立って、先に書いた面々のほか、テンコ、コゲパン、鉄研のメンバーなど、それぞれが魅力的に、実に丁寧に綴られているとも思う。が、丁寧なのが、逆に仇になっているというか、ダラダラとしたように感じられ、後半に入るまで、もっと手短にまとめれば良いのに、という思いがどうしても先にたった。
……が、それが最後の一編『鉄路の春』に入ってがらりと変わる。
ここでは、英一らの父が家出をする、というところから、花菱家の事情などに踏み込んでいくのだが、そこまで断片的に綴られてた、花菱家は親族との付き合いをほとんど絶っている、英一とピカの間に幼くして亡くなった妹がいた、などといったエピソードが一気に回収されていく。そこまで冗長と感じられた丁寧な描写が一気に繋がっていくのは流石。
とにかく、花菱家の問題などを読んでいて思ったのは、家族っていうのも難しい、ということ(そして、そこから考えると、それまでのエピソードも、家族が関わっているともいえる)
ちょっと前に読んだ『我が家の問題』(奥田英朗著)は、各家庭、どこにでもあるような些細な問題に悩む、というような話なのだけど、こちらでは「子供の死」という大きな事件が一つのきっかけになっている。けれども、それを通して描かれるのは、決して非日常とは言えないもの。家族だから、親族だからこそ、遠慮がなく、辛辣になってしまう。縁を切ったはずでも、どうしても付いて回る「縁」。家族だから、相手のことを思っているからといって、常に良い方向に向かうとは限らず、すれ違いの原因になってしまう。ここまで、徹底的に丁寧に描いていたからこそ、より、そういう心情に共感できたのだと思う。
どうしても長い、という印象はぬぐえない。でも、読んでよかった、と思ったのも確か。

No.2714

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