FC2ブログ

(書評)ROMES06 まどろみの月桃

著者:五條瑛

ROMES06 まどろみの月桃ROMES06 まどろみの月桃
(2011/07/20)
五條 瑛

商品詳細を見る


世界最先端の防衛システムを誇る西日本国際空港。テロ事件などはないのだが、昨今、薬物の運び屋が検挙される例が増えていた。ROMESシステムを用いての取り締まり強化を実施し、検挙者は増えたものの、押収量は伸び悩み……。その頃、砂村の旧友であり、都内で探偵事務所を営む堤は、窃盗の疑いをもたれている恋人・疋田の疑いを晴らして欲しいという依頼を受けて……
ROMESシリーズ第3作。
この作品、出版社のサイトや通販サイトなどにある内容紹介を事前に読んでいるかどうかでも、大分、違った印象になるんじゃないかと思う。なぜなら、冒頭に書いたような文章ではなく、次のようなものだから。

世界最先端の施設警備システム・ROMES06を擁する西日本国際空港で、ついにテロ事件が起きた!? 中国のVIP暗殺を試みるテロリスト・グループのあまりにも周到な計画。ROMESの天才的なシステム運用者・成嶋は、故国と家族──すべてを失った男の執念から、空港を守り抜くことができるのか?

ネタバレを思い切りして言うなら、本作で起こる個々の、小さな出来事がテロ計画のための伏線である、というのが判明するのは終盤になってから。それまでは、何か関わりがあるのだろう、ということは想像できても、それが一体何なのか不明というもどかしい状況で物語が綴られていく。
冒頭に書いたように、空港の中で次々と検挙される薬物の運び屋たちに、堤が受けた依頼。どちらにも、ジャンジュという男が関わっている。ここまでは早い段階でわかるものの、問題発言で知られるミュージシャン来日の騒動だとか、脅迫文が届いただとか、国際空港では日常的な話を挟みながら、ジャンジュに操られた少女・アンナはどうなるのだろう? ジャンジュの暴走を止められるのか? というような観点でずっと読み続けていた。そして、それだけに、終盤、実はジャンジュすらもが黒幕の掌の上だったというのに驚いた。多分、上に書いた宣伝コピーを読んでからだったら、この部分での驚きは半減していたと思う。
そして、その終盤で明らかになる計画はまさしく見事の一言。
「システムは裏切らない。裏切るのは人間」
というのは、成嶋が第1作目から言っていることだけど、今回の計画というのはまさしく、「人間」の隙を巧みに突いた計画と言える。冒頭にも書いたように、全く計画があること自体がわからないよう、数多くの駒を配置していく展開。繋がりが見えても、二重、三重、四重……と幾重にも渡って予防線を張り根幹は決して見せない。それぞれのパズルのピースは、ROMESシステムを通じて見えていたにも関わらず、一般の職員たちはおろか、成嶋にすら最後まで気付かせないというのは恐ろしいといわざるを得ない。しかも、それが一人の、余命いくばくもない男の執念だけで作り上げられたのだ、となれば……。
「ROMESには人間の執念ってものがどんなものか、まったく分からない」
「ROMESは負けなかったが……」
すべてが終わった後、成嶋がこうつぶやくシーンがあるけど、それを含めてシステムを使うのは人間であり、人間は完璧じゃない、というのが強調されたように思う。そして、犯人の狙いが成功したから、ではなく、その狙い以外に大きな損害が出なかったから、という意味で、成嶋たちの敗北というのを感じずにはいられなかった。
これまでだったら「忠犬砂村」とか書いていたし、今回も、砂村と成嶋とハルの三角関係(?)とかは色々とあったのだけど、そういうのがどうでも良く感じるくらい、犯人の執念の余韻が強く残った。

No.2713

にほんブログ村 本ブログへ




http://xxxsoraxxx.blog11.fc2.com/blog-entry-1021.html
スポンサーサイト



COMMENT 0