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(書評)デッド・リミット

著者:遠藤武文

デッド・リミットデッド・リミット
(2011/09/26)
遠藤 武文

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シングルマザーの智子のもとへ届けられた宅配便。そこに入っていたのは、息子の指。そして、犯人は5000万円を要求してきた……
というところから始まる連作短編集。
正直なところ、前作『パワード・スーツ』の出来が最悪クラスのものだったので、あまり期待していなかったのだが、今回はそれなりに楽しむことが出来た。
『パワード・スーツ』の場合、登場人物に丸っきり感情移入できなかったのだが、本作の登場人物もロクでもないような人物がたっぷり。けれども、本作の場合、それが一つの味になっているし、行動原理として理解はできる。
例えば、第1編目の主人公・智子。決して出来た母親とは言えない。けれども、息子のことは愛している。だから、犯人の要求があればそれを無理矢理にでも実行する。例え、犯罪行為であったとしても……。自分勝手だし、短絡的この上ないし、色々と行動はおかしいのだけど、ただの素人がパニックに陥っていたとしたら……ある意味、こうなっても仕方がないだろうと感じる。
もっとも同情できるのは、3編目の主人公・松浦。ようやく掴んだ就職は、悪徳業者。そんな息子を親は褒め称え、その挙句に、事件に巻き込まれて……。全く救いのない展開に、かなり凹んだ。
もっとも、この救いのない展開というのは、全編を通して貫かれており、それぞれの結末がそんな感じ。唯一、それなりに救いがあるのは4編目だろうか。思わぬ形で事件に巻き込まれることになった磯崎。事件そのものよりも、持ち逃げされた競馬の当たり馬券が気になる中、そこが事件と繋がっていることを知る……。自分勝手で、一般的に見れば、ダメな刑事なのだろうけど、意外と優秀なところを感じるし、情を感じさせる結末も悪くない。ある意味、この作品で最も救いのあるエピソードだと思う。
舞台背景とか、多少、荒唐無稽すぎるように感じるところもないではない。けれども、そこまでの登場人物の自分勝手さなどから感じる雰囲気には適合していると思うし、編を重ねるごとに明らかになっていく、という辺りもなかなか。
これまでの著者の作品の中では一番、素直に楽しめた。

No.2720

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