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(書評)炎の放浪者

著者:神山裕右

炎の放浪者炎の放浪者
(2011/09/07)
神山 裕右

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14世紀初頭のパリ。サラセン人を父に持つ鍛冶職人のジェラールは、突如、見覚えのない罪により、妻ともども捕らえられてしまう。そんな彼に対して要求されたことは、キプロスの神殿騎士・アンドレを捕らえること。妻を救うため、ジェラールは旅立ち……
凄く久々の著者の作品。過去に出た2作は正直、かなり低い評価だったのだが、今回はなかなか楽しめた。
物語は冒頭に書いたように、妻を救うために、謎の神殿騎士・アンドレを追う、という物語。ただし、その最中に、次々と事件が起こり、そこから信仰とは、宗教とは……というようなものに物語が動いていく。
時代背景としての14世紀初頭。十字軍遠征の末期であり、国王とローマ教皇という聖俗の戦いが強くなっていた時代。アンドレを追うジェラールはフランス国王の手下、という立場になるし、神殿騎士を捕らえよ、という狙いも教皇との対立が背景に存在している。さらに、ユダヤ人やムスリムといった異教徒も表れ、思惑が交錯していく。
裏切り者あり、数々の戦いあり、と物語は動いているのだけどすべてに信仰とは、宗教とは何か? というものが付きまとう。
これ、舞台が14世紀というのもあって、かなりえげつないやり方なども多いのだけど、少し考えると現在でも十分に通用するテーマだと感じる。人々が宗教、信仰という形で強く結びついている時代。それは、言い換えれば「信仰がない」などとされることだけで、その世界で生きることが出来なくなる、というのを意味する。村八分どこではない。しかも、まさしく命を奪われてしまう。そして、それを脅迫材料として行動を操ることすら可能……。そんな時代に、国王と教皇という二つの存在が、まさしく権力闘争を始めたら……。ファンタジー小説のような、そんな筆致で描かれているのだけど、信仰と宗教団体というようなものの乖離などを強く感じた。そして、その中を生きた結果のジェラールは……。これでも救いがあったのだと信じたい。
物語の中では暗号とか、ミステリー小説的な要素はあるのだけど、暗号文そのものが全く示されないし、謎解き要素はない。ただ、これはこれでよいのだろう。変にそこに力点を置くと、焦点がぶれてしまうだろうし。
救われない物語ではある。ただ、完成度は高いと思う。

No.2724

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