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(書評)忍び外伝

著者:乾緑郎

忍び外伝忍び外伝
(2010/11/05)
乾 緑郎

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本能寺の変が起きた頃の奈良の町。伊賀袴に身を包む文吾は、かつて松永久秀をも惑わせたという幻術師と相対する。そして、その男の幻術によって迷い込んだのは、自らの少年時代。忍としての日々……
第2回朝日時代小説大賞受賞作。
というような作品を手に取った理由は一にも二にも、第10回『このミス』大賞の大賞受賞作家の、もう一つの受賞作だから、という理由。この作品の場合、「時代小説大賞」となっているものの、内容的にむしろ伝奇小説的な趣がある。
物語は、冒頭にも書いた主人公・文吾が伊賀で忍として過ごした日々を中心に展開する。
戦国、安土時代、僅かな領地を、小勢力がいがみ合うという形で存在していた伊賀国。その伊賀国を信じられない規模の軍勢が襲ったのが2度にわたる信長による「天正・伊賀の乱」。伊賀の忍の中心的な存在である百地丹波、子飼いの忍として活動しながら、やがてその戦いに巻き込まれていく……という様が描かれていく。
物語としては、どちらかというと淡々とした雰囲気で進み、その中でいかにも胡散臭いお式なる女性が現れたり……で、終盤まで進む。正直、リーダビリティはあるので読み進むことは読み進むのだが、イマイチ、盛り上がりに欠けるな、という感じで読んでいた。それが、現在に時間軸が戻って一気にその伏線が回収されていく。
はっきり言って、真相そのものはファンタジーではある。
ただ、その一つの道具を用いることによって、なぜ、僅かな土地でしかない伊賀を大軍勢で攻めるという天正伊賀の乱が起きたのか? 真相が不明な事件である本能寺の変が起きたのか? また、作中で「忍でなくなるときは、心を捨てるとき」といわれる言葉の真相。そういうものがすべて回収されて、なるほど、こういうところに着地させたかったのか、というのがすんなりと理解できた。
主人公の文吾も、その名前などから、盗賊として名をはせることになるある人物をモデルにしていると思われるのだが、その逸話として綴られているものも上手く織り込まれていて、そういう技巧も上手いと思う。
先に書いたように、中盤まではやや盛り上がりに欠けるきらいがあることは否めない。最後もちょっとアッサリ気味。
ただ、それでも受賞するだけの上手さとか、そういうものを持っている作品でもあると思う。

No.2726

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