FC2ブログ

(書評)彼女が追ってくる

著者:石持浅海

彼女が追ってくる (碓氷優佳シリーズ)彼女が追ってくる (碓氷優佳シリーズ)
(2011/10/26)
石持浅海

商品詳細を見る


旧知の経営者らが集まる「箱根会」。夏子はそこで、かつての同僚であり、親友であり、恋敵であった姫乃に復讐した。真っ当な行為である、と確信を持ち、完璧な証拠隠滅をして……。ところが、その姫乃の死体が握ったカフスボタンにより、思わぬ方向へ疑惑は転がっていく……
碓氷優佳シリーズといつの間にか名づけられていたシリーズ第3作。それぞれ、優佳の雰囲気が違うような……。
今回は1作目の『扉は閉ざされたまま』に雰囲気は似ている。主人公は犯人はすでに事件を起こしていて、その隠蔽を図る。それを優佳が追い詰める。その中で、登場人物それぞれが議論をして……という辺りも共通。
そして、前作でもそうなのだけど……
普通の「頭脳派」の主人公がいくらがんばっても、優佳の前では道化に過ぎないな、と。
事件を起こした後、思わぬ形で参加者と出会ってしまった。なぜか、姫乃の死体がカフスボタンを握っていた。予想外の展開が待っていたにもかかわらず、何とかその場を取り繕い、他の参加者たちを煙に巻く。多少のミスはあるにせよ、おおむね、期待したとおりの方向に事件は進んでいる。
しかし、優佳にはバレている……。これまでの作品でも、存分に発揮はされていたけど、この優佳という人物が恐ろしく感じられる。今作の場合、カフスボタンの存在、というのが大きなポイントになるのだけど、そのことによってすっかり忘れ去られてしまった大きな破綻をしっかりと見逃さず、そこから論理的に推理を積み重ねていく。その冷静沈着さとかが、久々に読みながらも。優佳という人物を強く意識させる。
と、同時に、事件の構図も面白い。
主人公である夏子が、亡き恋人の復讐のため、と考えていることは最初から明白。では被害者は……?
立場が違えば、当然、視点も異なる。対立関係にある人間は、常に片方の側の存在とは言えない。夏子の計画と同じく、いや、それ以上に執念深く夏子のことを考えていた姫乃の執念というのが結末に重くのしかかった。最初、タイトルの「彼女」というのは優佳だと思うのだけど、そうではないのだな、と終盤、はっきりと感じられた。まさしく、死してなお執念は消えず、という感じで恐ろしい。
こう見ると何だ……
優佳=恐ろしい
姫乃=恐ろしい
と、恐ろしい二人に追われる立場の夏子って、これまで以上に道化状態じゃないか、というのを感じずにはいられない。

No.2791

にほんブログ村 本ブログへ





スポンサーサイト



COMMENT 0