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(書評)銀色の絆

著者:雫井脩介

銀色の絆銀色の絆
(2011/11/10)
雫井 脩介

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地方の公立大学に通う、藤里小織。安アパートに住み、テレビも見なければ、酒すら飲んだことがない、という彼女に、大学で知り合った千央美は尋ねる。「小織って何者?」 小織が語ったのは……
物語の題材となっているのは、スケート、それもフィギュアスケート。横浜で、習い事としてフィギュアスケートをやっていた小織は、両親の離婚もあり、母の故郷である名古屋へと引っ越す。その名古屋の名門スケートクラブで、フィギュアスケーターとしての才能を見出されて……
ちょうど、私がこの感想を書いている2月というのは、フィギュアスケートのシーズン。そして、そこで活躍をしている浅田真央選手とか、安藤美姫選手とかが、やはり、そういう名門のスケートクラブに所属し、才能を育てた、ということはよく知られているのだけど、まさしく、そんな世界を切り取った作品だと思う。
とにかく、読んでいて感じるのは、様々な「絆」。
名門クラブとは言え、まだ初心者にスケートを教えるような段階もあれば、まさしくプロを目指すようなトップスケーターを鍛えるような段階まで様々ある。上の段階に行くには、まず、本人の才能がなければダメだし、また、紹介だって必要になる。さらに、有名コーチには、高額の謝礼を払い、しかも、そこで教わる親たちは、コーチのために食事を作り、菓子やお茶を用意し、さらに、子供のスケートのサポートをすべてすることが要求される。そんな特殊な世界。
そんな世界で暮らしていたことが、引退をし、普通の大学生活を送っている小織の現状と、当時の母親の視点で綴られていくのだが、とにかく凄い世界だ、というのを感じずにはいられない。
正直なところ、この本を読んでいて、これはこれで良いのだろうか? という、思いを抱かないわけではない。とにかく、本人も周囲も、すべてをなげうってやらなければならない世界。作中で、小織の親戚が「スケートなんて、金持ちの道楽」と言っているシーンがあるのだけど、ある意味、それは正解。生半可なものではできないもの。けれども、常に親は子供をサポートし、また、同じコーチに教わる子供たち、そして、サポートする親たちの間では、確実に絆が作られていく。勿論、その絆というのは、コーチと子供、コーチと親の間にも及んでいく。子供が選手として大成するために、すべてが一丸となっていく、という様をまざまざと見せ付けられるような思いを抱いた。
先に書いた浅田真央選手が、試合の直前に母親が病に倒れて試合を放棄して帰国……なんていうのがり、一部では、「甘い」みたいな意見を見たのだけど、こういう周囲が一丸となっていた世界で育ったら、何よりもそちらを優先するのは当然じゃないか、という気までしてくる。
正直なところ、これを読み終わっても、私は、この世界は異常だと思う。けれども、本編の中でじっくりと、選手、親、コーチ……それぞれの絆が作られていったのを見せ付けられ、それは引退後も決して失われていない、というのを見ると、それはそれでひとつの財産となるべきものなんだな、というのを感じずにはいられなかった。

No.2792

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