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(書評)ひぐらしふる

著者:彩坂美月

ひぐらしふるひぐらしふる
(2011/06/09)
彩坂美月

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夏の終わり、恋人との関係に迷い、祖母の葬儀のため田舎へと帰った有馬千夏。地元に残る旧友とのやり取りの中で、かつて、自分の身の回りでおきた事件の真相が明らかになっていく……
という連作長編とも言うべき作品。
なんか、色々と微妙な印象。全5章と、プロローグ&エピローグという構成で、それぞれで奇妙な事件が起きた過去の出来事が登場する。どこからともなく見つめる視線、消えた婚約指輪、消えた親子に失踪した少年、そして、親友の拉致事件……。それぞれ、ちょっとしたところからヒントを見つけ、その解決をしていくというのは面白いし、また、その中で取り残された謎やその中の矛盾点が最後にしっかりとつながって、という構成も計算されていると思う。
ただ、なんか、一種のアンフェアさと、著者のデビュー作でも感じたキャラクターの描き分けの弱さによって、イマイチ、それが鮮やかに感じられないのだ。その意味で、デビュー作と同じく「惜しい」という感じがする。
その中で好きなのは最初の2編、『ミツメル』と『素敵な休日』。
『ミツメル』は、暗闇の中、ずっと追いかけてくる視線……というもの。作品の中の、さくらんぼ栽培と将棋の駒が有名という町ならでは特長を生かしての真相は、終わってみれば「なんだ」という感じだけれども面白い。一方の『素敵な休日』は、婚約指輪を消してしまう、というもの。こちらも言葉のトリックや心理的な盲点というのが巧く生かされており、小粒だけれども良いと思う。しかも、どちらも、苦い予感を抱かせる結末がそれに花を添えている。
逆に、最終章は、終盤のそれぞれがつながっていく様もそうなのだけど、その前の、拉致された友人を追う、というところが、すべて都合よく「こういうのがあった」で続くため、読者としては推理とかを楽しめずついていくだけ、という印象。物語としてはもう一歩だったかな、と思う。
ということで、繰り返しになるけど、色々と「惜しい」感じがする作品。ただ、田舎の風景を感じさせる情景描写とか、そういうところは非常にさわやかで、そういう雰囲気の良さはとても良い作品だとも感じた。

No.2816

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