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(書評)メビウス・レター

著者:北森鴻

メビウス・レター (講談社文庫)メビウス・レター (講談社文庫)
(2001/02/15)
北森 鴻

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「テガミハ、トドキマシタカ」 取材旅行から帰宅した作家・阿坂龍一郎。その留守電に残っていた一本のメッセージ。そして、その通りに、阿坂の元へ手紙が届いていた。そして、その手紙は、阿坂が封印したはずの過去についてかかれたものだった……
愛川晶氏の解説に、トリッキーすぎる、という理由で出版を目前にして取りやめにされてしまった、なんていうことが書かれているのだが、色々と思うところはあるが、確かに、そう思わせる気持ちと言うのはわかる気がする。かなり複雑に入り組んだ構造をしているのは間違いないのだから。……もっとも、刊行がされて10年以上が経過した現在の感覚で見ると、このくらいなら、という気持ちも同時にあるのだけど。
物語は、「現在の」阿坂の日々と、手紙によって綴られる過去、という二つのパートをメインに展開する。
作家として順調にキャリアを重ねている阿坂。しかし、担当編集者は、しつこくていらいらとする。また、隣人の女性は、変質的に自分のことを追いかけてくる。どちらも、ハッキリ言ってかなり自分勝手でイライラとさせる存在で、まず、その存在について阿坂に同情した。そして、手紙と、その人々が殺される事件の発生……。
一方の手紙は、高校生の少年が不可解な死を遂げたことが中心に。自殺とされたその死の真相を追う「ぼく」。その調査の中で、次々と新たな事実が判明していく……。
最初から阿坂が「封印した過去」と述べているように、手紙と過去が何らかのリンクをしていることは自明のこと。その中で、手紙を書いた主は誰なのか? 誰が届けているのか? さらに、現在の事件との関連性は? と次々と謎が提示されていき、しかも、作中に何重にも仕掛けが施されている。文庫で340頁ほどの分量なのだが、様々な要素を、その中に詰め込めるだけ詰め込んだ。そんな感じがする。
結構、普通に読んでいても「?」と引っかかる部分が多いのだけど、それが「実はこうでした」と判明し「おお!!」と感じ、さらに、「こっちも」「こちらも」と中盤くらいから次々とひっくり返っていくので後半はまさに一気読みという印象。そのパワフルさというのは凄いと思う。
ただ、そのパワフルさの一方で、よくよく考えると「これって無理がないか?」というものもある。それぞれ、全くに無理、という感じではなく、「ちょっと強引」と思う程度。でも、それが先に書いたように沢山集まると、塵も積もれば……というようなぎこちなさに感じてしまうのだ。
もっとも、それはある程度、承知の上、なのかも知れない。過去に読んだ『冥府神の産声』とか、『狐罠』とか、業界の問題などを織り込んだ作品と違い、本作は、あくまでもエンタメ作品に徹した作品。どちらを取るのか、という選択の結果、というのは十分に考えられることだと思う。あとは、好みの問題だろうし。
引っかかるところがなかったわけではない。それでも、一気に読ませる力はある。そんな作品じゃないかと思う。

No.2846

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COMMENT 2

そら  2012, 04. 16 [Mon] 22:04

>引っかかるところがなかったわけではない。それでも、一気に読ませる力はある

ホント,力のある作家さんだったんだろうなぁと思います。
早くに亡くなってしまったことが,
今さらながら惜しまれます。

>過去に読んだ『冥府神の産声』とか、『狐罠』とか

そのうち,香菜里屋にもお立ち寄り下さい♪
…と,なぜかアピールしてみる(^^;)


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たこやき  2012, 04. 22 [Sun] 14:19

そらさんへ

本当に、若くして亡くなられたのが惜しまれますよね。
この作品も、欠点はあると思うのですが、それでも勢いとか、そういうのをとても感じたので……。知り合いにお勧めされて、読み始めたのですが、だんだんと作品数が減っていくのが勿体無い気分です。

>そのうち,香菜里屋にもお立ち寄り下さい♪

勿論、立ち寄る予定です。
古い作品から1作ずつ読み進めているところです。

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  •  「メビウス・レター」 北森鴻
  • デビュー2作目の作品…となるはずが,目前で出版中止になったという, なかなかいわくつきの作品…だとか。 文庫版解説者(愛川晶)じゃないけれど,何となく分かる気が…(*^_^*) いや,一気に読んだんです...
  • 2012.04.16 (Mon) 21:49 | 日だまりで読書