著者:田南透
K大学法社会学ゼミのアイドル・石本陽菜。ゼミの男性陣は、彼女に憧れ、自らの秘密を彼女に伝える。しかし、彼女は、男を利用し、利己的に振舞うという本性を持っていた。ある日、彼女は掛ってきた無言電話に憤り、その秘密を喋ってしまう。その結果……
うーん……多分、好き嫌いが分かれる作品じゃないかと思う。個人的に、殆どサイコな結末とかは嫌いじゃない。しかし、それまでの部分で色々と引っかかることがあって乗り切れなかった。
冒頭に書いてしまったことであり、作品の内容紹介にも書かれているので書くけれども、そもそもの被害者である陽菜が、無言電話に対して、ゼミの男たちから聞いた秘密をぶちまける、というところからして「おいおい……」という感じ。だって、常識的に考えて、自分のところに執拗に無言電話をかけてくるっていうのは身近な存在だろう。なのに、なぜ、そこで暴露しちゃうの? という感じになるのだ。そして、そんなうかつな人間が、男性陣を惹き付けられるものだろうか? とも。
そして、さらに気に掛るのは、キャラクター配置が人工的過ぎる点。
冒頭で書いた紹介文だと、陽菜以外について書かれていないのだけど、彼女自身は被害者で、物語の途中で殺害されてしまう。そして、彼女に心を寄せる景太を中心として、ゼミ関係者、警察などの視点による群像的な描写が行われる。ところが、それぞれの登場人物が、やたらと複雑な家庭環境だったり、物凄い借金を背負っていたり、犯罪に手を染めていたり……でありえないだろう、という感じになるのだ。少なくとも、私の周囲で、そんなの誰もいないぞ! と……(笑) あまりにありえなさ過ぎて萎えてしまった。また、終盤の事件の顛末とかは、あまりにもありえなさ過ぎる。そんなもの、どうやって運ぶんだよお前、という感じで。
あと、嵐の孤島、という設定も実はあまり意味がなかったり……。
色々とやりたい、ということがあるのは伝わってくるのだけど、色々と詰め込んで、それをあまり整理しないままにつなげて話を作ってしまった感じがするのだ。例えば、群像劇的な形ではなく、視点を絞っていくなどしたほうが、物語として入りやすいと思うし、ラストシーンもより映えたように思う。
かなり厳しい評価になってしまったのだが、そういうのが解消されることを期待して、次作も読んでみようとは思う。
No.2863

![]() | 翼をください (ミステリ・フロンティア) (2012/01/27) 田南 透 商品詳細を見る |
K大学法社会学ゼミのアイドル・石本陽菜。ゼミの男性陣は、彼女に憧れ、自らの秘密を彼女に伝える。しかし、彼女は、男を利用し、利己的に振舞うという本性を持っていた。ある日、彼女は掛ってきた無言電話に憤り、その秘密を喋ってしまう。その結果……
うーん……多分、好き嫌いが分かれる作品じゃないかと思う。個人的に、殆どサイコな結末とかは嫌いじゃない。しかし、それまでの部分で色々と引っかかることがあって乗り切れなかった。
冒頭に書いてしまったことであり、作品の内容紹介にも書かれているので書くけれども、そもそもの被害者である陽菜が、無言電話に対して、ゼミの男たちから聞いた秘密をぶちまける、というところからして「おいおい……」という感じ。だって、常識的に考えて、自分のところに執拗に無言電話をかけてくるっていうのは身近な存在だろう。なのに、なぜ、そこで暴露しちゃうの? という感じになるのだ。そして、そんなうかつな人間が、男性陣を惹き付けられるものだろうか? とも。
そして、さらに気に掛るのは、キャラクター配置が人工的過ぎる点。
冒頭で書いた紹介文だと、陽菜以外について書かれていないのだけど、彼女自身は被害者で、物語の途中で殺害されてしまう。そして、彼女に心を寄せる景太を中心として、ゼミ関係者、警察などの視点による群像的な描写が行われる。ところが、それぞれの登場人物が、やたらと複雑な家庭環境だったり、物凄い借金を背負っていたり、犯罪に手を染めていたり……でありえないだろう、という感じになるのだ。少なくとも、私の周囲で、そんなの誰もいないぞ! と……(笑) あまりにありえなさ過ぎて萎えてしまった。また、終盤の事件の顛末とかは、あまりにもありえなさ過ぎる。そんなもの、どうやって運ぶんだよお前、という感じで。
あと、嵐の孤島、という設定も実はあまり意味がなかったり……。
色々とやりたい、ということがあるのは伝わってくるのだけど、色々と詰め込んで、それをあまり整理しないままにつなげて話を作ってしまった感じがするのだ。例えば、群像劇的な形ではなく、視点を絞っていくなどしたほうが、物語として入りやすいと思うし、ラストシーンもより映えたように思う。
かなり厳しい評価になってしまったのだが、そういうのが解消されることを期待して、次作も読んでみようとは思う。
No.2863

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