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(書評)中途半端な密室

著者:東川篤哉

中途半端な密室 (光文社文庫)中途半端な密室 (光文社文庫)
(2012/02/14)
東川 篤哉

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街のテニスコートで、地元で有名な不動産会社社長が変死した。コートは鍵がかかっており、周囲には4メートルの金網が……。完全なる密室とはいえないが不可解なその状況を、新聞記事を読んだ十川という男は推理して……
という表題作など、5編を収録した短編集。といいつつ、表題作以外は、幹夫&敏という大学生コンビが登場するシリーズとなっている。そして、解説を読むまで知らなかったのだが、著者がデビューする前に雑誌「本格推理」に掲載されたものだという。そう言われてみると、また別の感慨が浮かんでくる作品集といえる。
まず、表題作なのだが、著者の作品に出てくるギャグは控えめで、何か「真面目」な印象を受ける、ということ。喫茶店で、語り部たる片桐と、探偵役である十川が新聞記事を元に推理をする、という形で進められる。冒頭にも書いたけれども、完全な密室とはいいがたい。しかし、そもそも、内側から鍵をかけ、わざわざ金網を上って逃げるということをする意味がわからない。その不合理を、しっかりと解消させる解決案を示して終わる。先にも書いたように、ギャグそのものが少ないこともあり、非常に真面目な本格モノという印象を抱かせる作品だと思う。
そして、2編目『南の島の殺人』。ここから、だんだんと著者の、ギャグが前に出てくるように感じる。
こちらも……というか、全編が安楽椅子モノになっている。ただ、その中で、被害者は全裸の男性という状況。そして、真相への最大のヒントがかなりの脱力モノ。しっかりと着地をしているのだが、それ以上に、「らしさ」が表に出てきたことを感じる。さらに、『竹と死体と』などと編を続けるにしたがって、大学生コンビのやりとりが、その後の著者の作品を彷彿とさせるものへと発展していく。
まぁ、『十年の密室・十分の消失』とか、その後味とか、そういうのは良いにしろ、そのトリックをどうやって実行したんだ? と思うようなものもある。理屈の上ではともかく、そのそれを実際にやることが、無茶苦茶難しいし、大変だろう、という感じがしてしまうから。ただ、先にも書いたし、解説でも書かれているように、著者の作品としては珍しい、ウェットな作品という意味で新鮮だった。
そして、何よりも、著者の原点とか、そういうものを強く感じることが出来た作品集だったな、という風に思う。

No.2872

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COMMENT 2

タッキー  2018, 10. 17 [Wed] 18:28

中途半端な密室

南の島の殺人でなぜ敏ちゃんとミキオは手紙で謎が解けたと正直に書かなかったのですか?

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たこやき  2018, 10. 19 [Fri] 03:49

タッキーさんへ

コメントありがとうございます。

ただ、すいません。私自身、読んだのが6年以上前になるので記憶自体があいまいでして、その辺り、回答できません(私が、記事に、それを書かなかった理由は、著者の作風が(これを書いた当時の)近年の作風と違っている、という印象が何よりも強かった、という部分に焦点を当てていた、ということになります)

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  •  「中途半端な密室」東川篤哉
  • テニスコートで、ナイフで刺された男の死体が発見された。 コートには内側から鍵が掛かり、周囲には高さ四メートルの金網が。 犯人が内側から鍵をかけ、わざわざ金網をよじのぼって逃げた!?そんなバカな! 不可解な事件の真相を、名探偵・十川一人が鮮やかに解明する。(表題作) 謎解きの楽しさとゆるーいユーモアがたっぷり詰め込まれた、デビュー作を含む初期傑作五編。 デビュー前の作品も含め五編...
  • 2014.02.20 (Thu) 12:57 | 粋な提案