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(書評)ダークルーム

著者:近藤史恵

ダークルーム (角川文庫)ダークルーム (角川文庫)
(2012/01/25)
近藤 史恵

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8編を収録した短編集。
まず、各編の感想ではないところから書き始めると、巻末にある解説を読んで「そういえば」と思ったことがある。それは何かというと……数多くの作品を出している著者だけど、ノンシリーズの短編集は本作が初。そのことが物凄く意外だった。ただ、ダークルームという言葉の響きから来る様な(ダークルームの意味そのものは、写真に関する暗室だけど)、何か暗い雰囲気をまとったものは共通している。
例えば、作品集の冒頭を飾る『マリアージュ』。高級フレンチレストランアゼル・リ・ドーに、毎日のように通ってくる女性。1食が1万円を超えるような金額になる。しかも、決して料理のバリエーションがあるわけでもない。料理の修業などであっても、毎日来る理由がわからない……。
タイトルでもある「マリアージュ」とは結婚の意味。転じて、ワインと料理が引き立てあい、よりよくすることを意味する。女性の辿ってきた過酷な人生と、料理のマリアージュ。残酷でありながら、しかし、そこに彼女にとっては……と考えると何か苦い思いを抱かせる。
著者らしいドロドロとした感情を抱かせるのは、『窓の下には』。小学校時代、同じアパートの下の階に同い年くらいの少女が越してきた。仲良くなれるかも、と思ったのだが……。子供の無邪気な視点と、深層の中にある大人のドロドロした感情。こちらも、ある意味、物凄く残酷な話と言えると思う。
悪意を感じたのは『SWEET BOYS』。同じアパートに越してきた二人の青年。真紀と涼子は、二人と親しくなり、やがて、それぞれがそれぞれと結婚をするのだが……。ネタとしては、決して予想外とはいえないのだけど、『窓の下には』と同じような負の感情と、それを徹底的に利用してでも、という一種の悪意がタイトルとは裏腹に感じられる。この作品のネタだと、男女が逆転したような設定が多い気がするのだけど、敢えて逆を言っているのが印象に残るのかも、と思ったり。
『北緯六十度の恋』も、途中までの方向性は近いのだけど、結末は逆。こちらは作品集の最後を飾っているのだけど、ここまで苦い結末の物語を続けた中、苦さはありつつもひとつ、穏当なところで着地する物語によってほっとした気分にになる。恋心が、愛が、すべてを溶かしてしまったような……そんな思いを抱いた。

No.2901

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