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(書評)菓子フェスの庭

著者:上田早夕里

菓子フェスの庭 (角川春樹事務所 ハルキ文庫)菓子フェスの庭 (角川春樹事務所 ハルキ文庫)
(2011/12/15)
上田 早夕里

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昔から、甘いものが大の苦手である武藤。そんな彼が、職場である西富百貨店企画部で初めて任されることになったのは、スイーツ関係の企画であった。苦悩をしながらも、菓子フェスに参加してくれる店を求め、フランス菓子店ロワゾ・ドールを訪れて……
『ラ・パティスリー』の5年後を描いた作品。作中の時間と同じように、私自身が、前作を読んでから本作を読むまで数年間のインターバルを置いたため、どうだったっけ? と思ったり。読後に、前作の感想を見たり、設定を調べなおして、「ああ、そうだったっけ?」というのも結構あったり。
で、前作を読んでいるかどうかで、作品の印象が変わったりする部分もありそうだのだけど、本作は2つのテーマがあるように感じた。それは、作中の二つの視点。お菓子が苦手な男・武藤のお菓子との出会いと夏織への恋。そして、前作から5年。職人としての修行を積み、成長をした夏織のその後。それを、菓子フェスというひとつのイベントを通して、上手く描いたな、という風に感じる。
武藤の視点というのは、ある意味、一般読者の視点に近いのではないかと思う。勿論、お菓子が全くダメ、という人は珍しいと思う。けれども、それほど得意ではない、とか、そういう人は沢山いるだろうし、「食べられないわけではないけど、得意ではない」という人もいると思う。そういうときに、武藤の視点を借り、夏織の説明を前にその奥深さを感じさせていく。前作や、その姉妹作『ショコラティエの勲章』などでも扱われているはずなのだけど、久しぶりに読み、菓子の世界といのを再確認した。
そして、もうひとつが、夏織自身の成長と決断。こちらは完全に前作との絡み。前作では、熱心ではあるが、まだ、厨房にすら入れてもらえない新米だった夏織が、そのときの熱心さはそのままに、着実にキャリアを重ねているのが強く感じられる。菓子が得意ではない、という武藤の、普通とは違った要望を汲んだ創作などはその最たるものだと思う。そして、そんな夏織だからこそ、武藤が惹かれるのもわかるし、前作を読んでいるからこそ、夏織の純粋な思いもわかる。こうなるしかないよな、という結末も含めて(ただ、その結末も、菓子の世界の奥行きを感じる辺りはさすが)
波乱とか、そういうものとは無縁。でも、菓子の世界の奥行き、そして、甘酸っぱい思い。そういうものが詰まった一冊に仕上がっていると感じた。

No.2905

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COMMENT 2

苗坊  2012, 07. 10 [Tue] 00:57

こんばんは。
続編楽しみに読みました^^
夏織の目線の物語は成長部分だったり恭也との関わりだったり前作の続きとして面白く読みました。
武藤の方の視点も良かったです。私は甘いものが大好きなので、甘いものが嫌いな人の一般人の目線というのが何だか斬新に感じました。
確かに大きな事件のようなものはありませんでしたが、それでも面白く読みました。

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たこやき  2012, 08. 17 [Fri] 11:08

苗坊さんへ

こんにちは。
いつも通りに、返信が遅くなり、すいません。

前作を読んでから、特に時間をそれをかけないで読むと、よりそれを強く思うのではないかと、苗坊さんのコメントを読んでいて思いました。5年間の間の夏織と恭矢の関係とか、違いが鮮明になるはずですし。
一方で、武藤の視点は、個人的に結構、わかるわかる、という感じでした。
ただ、続編と言うだけでなく、ちゃんと新たな視点などを入れてくる辺りが良いな、と感じました。

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